ミル*キス
「殴られるかと思った」


オレがそう呟くと、スミレさんはようやくフッと口元を緩ませた。


「アナタってサイテーね。殴っても良かったの?」



オレはもう一度彼女に顔を近づける。


「うん。オレ、サイテーやねん。迷惑やったら……殴って」


スミレさんはクスクス笑う。


「ほんとに殴るよ?」


なんて怖いこと言いながらも柔らかな表情をしている。


「ウソウソ。殴らんとって」


オレも笑いながら彼女の腰に手をまわして、体を引き寄せる。


頬にかかった髪を払って、手で顔を包み込む。


唇が触れる手前で一瞬動きを止めたら、彼女の唇がほんの少し開いたのが見えた。


それがOKのサインだと思った。


オレはそのまま深く彼女に口付けた。


吐息ごと飲み込んでやる。


そう思いながら……。



――ごめん、ケンジ。


手ぇ出すなって言われてたのにな。


ダメみたい。

……無理っぽい。


そんな約束


3日目にして

守れそうにないや。



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