ミル*キス
店の外に出ると、人影がオレの視界に入ってきた。



「お疲れ……さまです」


遠慮がちに声をかけてきたのはミーコだ。


オレが出てくるのを待ってたのかな?


街灯に照らされた顔が真っ赤になってる。




「あの……あたし、何も見てませんから」



絶対見えてたな。


まぁ、見られても別に困らないけど。

わざわざそんなこと報告するために、ここにいたのか?



「おつかれ」


オレはそれだけ言って彼女の前を素通りした。


だけど数歩進んだところで足を止めた。


はぁとため息を吐き出して、振り返る。


「歩いてきたん?」


「……え!?」


「送るわ。こんな時間に一人で歩いてたら危ないやろ?」


「え! あ、いいです! 大丈夫です! すぐ近くだし!」


遠慮しているのか、ミーコは両手をブンブンと振っている。


「家どこ?」


「……小藪町(コヤブチョウ)。光が丘公園の近くです」


たしかに近いっちゃあ近いんだけど。

徒歩で10分ってとこ。

だけど、光が丘公園といえば、森みたいに木が生い茂っている大きな公園だ。

あの前を女の子一人で歩くなんてかなり危険な気がする。


中に連れ込まれたら終わりだろ。


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