ミル*キス
オレは首の後ろをポリポリと掻いてため息を吐き出す。


「そんなん言ってないやろ。別に迷惑じゃないよ」


ミーコは一瞬ホッとしたような顔をした。

だけど次のオレの言葉に、その表情はまた変わった。



「下心がないんやったら……やけど」



ミーコは今にも泣き出しそうにキュっと唇を結んで、


「お金は……大丈夫です」


そう言って歩き出すと、オレを抜いていってしまった。



そして背中越しでもオレに届くような、大きな声で言った。


「安心してください! 別にストーカーみたいにつきまとったりしません」


その時のミーコの顔は見えなくて。


オレは今彼女が何を考えているのかなんて、まるでわからなかった。

< 84 / 276 >

この作品をシェア

pagetop