ミル*キス
その後はずっと気まずい空気が流れていて、オレ達は無言のままだった。



「あ、ここです」


やがて一軒の家の前でミーコが足を止めた。


「ほんまに公園のすぐそばやな」


ミーコの家は公園の斜め向かいだった。


「オレも子供ン頃、よくここで遊んでたわ」


そう言うと、ミーコは「そうですか……」と小さな声で呟いた。


「このあたりも結構変わったな」


「え?」


「あそこは空き地やったやろ?」


公園の隣には10階建てぐらいのクリーム色したマンションが建っていた。


「えっ。ああ……そうですね」


それだけ言うと、ミーコはしばらく考え込むかのように黙って、そしておもむろに口を開いた。


「あのっ……」


「ん?」


「何度行ってもやっぱダメですか? あたしはお客にしかなれませんか?」



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