ミル*キス
目を凝らして、ゆっくりとこちらに向かってくる人影を見つめる。



――ズ……ズズズ……


足を引きずるような音が響く。


やがて近づいてきたその人の顔が確認できた。



薄暗くてもわかる。


まるでCGか何かで作られたかのようだと思った。


白い肌に、大きな瞳。

欠点が1つも見つからないぐらいの整った顔。

2次元の世界から抜け出してきたような美少女。


「ごめんね。勝手に入っちゃって……」


彼女はそう言って、肩まで伸びたクセのない黒髪をそっと耳にかけた。


耳たぶには特徴的な大きなホクロ。



――ああ、そうか。


これは10年前のあの日だ。


彼女はスミレさんだ……。
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