キスしないと出られない部屋

壁ドン



 私は、まず壁ドンの説明をした。この場に、漫画やドラマを録画した媒体があるなんて都合良いことはない。

「先輩っ。こうして欲しいんです」

 そのため、私が先輩を壁ドンした。

 すらりと背の高い先輩が壁を背に立ち、私は先輩の正面に立ち右手を壁についた。

「これが……胸キュン?」

「っ、せ、先輩……!ドキドキしませんか……?」

「そうだね、よく分かんないかも。ドキドキするんだろうか?」

 先輩のまさかの言葉に、ガーン。しかし、このまま落ち込むわけにはいかない。

 空いていた左手も壁につけ、先輩の方を見た。

「あっ、これならどうですか!?」

「……これは?」

「先輩を逃げられないよう、両サイドからドンしてみました」

 そう言うと、クスクスと笑われてしまった。「えっ、えぇっ?」と、動揺しているとその反応もおかしそうにしていた。

「これじゃあ、俺に抱きつこうとしてるみたいじゃん」

「なっ……!」

 先輩の発言により、一気に恥ずかしくなった。顔に熱が集まった。


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