キスしないと出られない部屋


 恥ずかしくて、顔から火が出そうな思いだった。顔を両手で覆い「すみません、すみませんっ」と何度も謝った。

 ハレンチだと思われたらどうしよう。あぁ、少女漫画やドラマにばかり憧れてないで、もっと現実を見ておくべきだった。

 実際の私は、教室の隅の方で運動部のエースで勉強ができてイケメンで友達がたくさんいるヒーローみたいな先輩に憧れてるだけだった。クラスの男子とは、何だか色々意識しちゃって上手く話せないし。

 そんな思いでいっぱいになっていると、先輩の大きな手が私の両手首を掴んだ。

 隠していた手を左右に広げると、先輩がしゃがんでくれたおかげで同じ目線で顔を見合わせることになった。

「ごめんごめん。からかおうとおもってたわけじゃなくて。壁ドンのやり方、分かったよ」

 目を細めて、余裕たっぷりな表情を浮かべながら言った。

「へ?っ、えっ!?」

 そんな先輩を、見ていたらくるりと体が回った。

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