キスしないと出られない部屋
とん、と背中に壁が当たった。壁を背にして右手は壁に手をつき、反対側を左肘で塞がれた。壁に当てた先輩との距離は、数十センチ。
心臓が、バクバクと脈を打つ。
「せ、せ、せっ……先輩っ!?」
「逃げられないように、両手でドン……だっけ?」
クス、と笑いながら言われ、先ほどの自分がいかに大胆で恥ずかしいことを言ってたかと思ってしまう。
「〜っ、す、すみませんっ」
「何で謝るの?」
つい謝ってしまった。悪いことなんてない……いや、先輩のこのビジュをこの距離で見てるのって重罪、なのでは!?
「ねぇ、天野さん」
「な、なんですか…?」
目を細めて優しい顔をしてる先輩。だけど、何を考えてるのか全く分からない。こてんと小首を傾げれば、肩より長い髪を耳にかけられた。
「ひゃっ」
「ごめんね。でも……」
そう言うと、そっと耳元に顔を近付けて「こういうのって、どう?」と意地悪な顔をして言われた。