キスしないと出られない部屋


「か、可愛いとか簡単に言ったらダメ、だよな」

 先輩の顔が、心なしか赤くなっているような気がした。

「い、いえっ。先輩は、私のこと……その、ドキドキさせようとしてくれてるだけ、ですから」

「……いや」

 変な沈黙の後、先輩が否定的な言葉を続けた。こてんと小首を傾げながら先輩を見ると、目を逸らしながら口元を押さえていた。

 えっ、えぇっ?先輩、なんですかその反応。

「ごめん。つい」

「え?つい?あの、先輩……それって」

 ポジティブな方で言葉を捉えてしまいそう。

 私をドキドキさせるために、狙ったんじゃなくて本心ってーー。

「あー、まずいな。コレ。思ったよりヤバいかも」

「せ、先輩……?」

 先輩の考えが、まるで分からなくなった。


< 20 / 28 >

この作品をシェア

pagetop