キスしないと出られない部屋
「か、可愛いとか簡単に言ったらダメ、だよな」
先輩の顔が、心なしか赤くなっているような気がした。
「い、いえっ。先輩は、私のこと……その、ドキドキさせようとしてくれてるだけ、ですから」
「……いや」
変な沈黙の後、先輩が否定的な言葉を続けた。こてんと小首を傾げながら先輩を見ると、目を逸らしながら口元を押さえていた。
えっ、えぇっ?先輩、なんですかその反応。
「ごめん。つい」
「え?つい?あの、先輩……それって」
ポジティブな方で言葉を捉えてしまいそう。
私をドキドキさせるために、狙ったんじゃなくて本心ってーー。
「あー、まずいな。コレ。思ったよりヤバいかも」
「せ、先輩……?」
先輩の考えが、まるで分からなくなった。