キスしないと出られない部屋
そして、私達は
※※※
ーーピピピッ
軽快なアラーム音により、バチッと目が覚めた。白とピンクで統一された部屋。見覚えのある光景。ここは、私の部屋である。
アラームを止めるためにスマホに手を伸ばし、アイコンを右へスライド。音が止まり、ぽすっとスマホが布団に包みこまれる。
「夢、だったのぉ……!?」
時刻は午前7時。平日で、毎日アラームをセットしている時間だ。どうやら、これまでの先輩とのことは……夢、だったらしい。
「まぁ、そりゃあそうか。先輩と私なんて、月とスッポン。雲の上のような人だもんねぇ」
そんなことを言いながらむくりと体を起こした。ショックなのを少しでも和らげるために、独り言が止まらない。
クローゼットを開け、パジャマから制服に着替えた。赤いチェックのリボンが特徴の制服。部屋から出ると、お母さんが用意をしてくれてるであろうトーストの香りが二階まで漂っていた。
朝のこの香りがたまらなく好きだ。匂いにつられ、リビングへ行くと思ったとおり。トーストにバターが塗られていた。しかも、いつもならトーストとサラダとかトーストと目玉焼きだけど、今日はトーストとサラダと目玉焼きとウインナーまである。朝から豪勢だ。
「今日豪華じゃない?どうしたの?」
「ちょうど賞味期限が切れそうだったから」
何か良いことでもあったのかと思ったけれど、現実的な答えが返ってきて勝手に「あぁ、そう…」と言いながら落ち込んだ。