キスしないと出られない部屋


「先輩? どうしたんですか?」

「おかしいな……ドアが開かない。でも、鍵なんてないんだよ」

 そう言うと、「ほら」と言いドアノブを指差した。先輩が言うように鍵はついてない。ただ、ドアノブが付いてるだけなのに回らないのはおかしい。

「ドアが故障してる、ってこともなさそうだな」

「そう、ですね……」

 特別詳しいわけではないけれど、ドアノブが回らないことをおかしいとは思える。

「どこかに窓があったりとか……。あ、リビングなら、大きい窓があるよね。そこから出られないか確認してみよう」

 そう言うと、今度はリビングがあるであろう扉を開けた。

 扉を開けると、大きな窓がいくつも付いている開放的なリビングがあった。広々としていて、家族団欒できそう。

窓のひとつに近付き、開けようとするがビクともしない。

「おかしいな……何で開かないんだ」

 眉間にシワを寄せ、怪訝そうな顔をしながら言った。

「私、こっちの窓を……あれ」

 先輩が開けようとした窓の反対側にある窓を開けようとすると、近くにあったダイニングテーブルが一瞬目に入った。

 驚いて、二度凝視してしまった。綺麗な二度見である。

「どうしたの?」

 私が、声を発したことで異常に勘付いた先輩が私の方へ近付き、ダイニングテーブルを見て目を丸くさせた。

「は?な、なんだよこれ……」

 ダイニングテーブル一面に、驚きの文字が彫られていた。


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