キスしないと出られない部屋
そして、私はふと思った。
みんなの憧れであり、アイドル的存在の先輩を私の一存で奪っていいわけがない。最初は、キスさえしなければ先輩とずっと一緒にいられる。閉じ込められた空間で、先輩の吐いた息を私が吸えることに喜びを感じていた。
ーーしかし。
「先輩」
「どうしたの?」
「キスしたら、密閉された空間で同じ空気を吸えなくなるので無理です!ぜひとも、ここで寿命を全うさせて下さい!」
嫌われる覚悟でそう言うと、先輩の顔はドン引きだった。
「は?何バカなこと言ってんの?学校とかどうすんの?」
正論パンチで返された。
「待って下さい!これは、ここがキスしないと出られない部屋だと知って、ついさっき改心するまで思っていたことです!」
「いや、何でも喋ったら許されるとかないからね?むしろ、そんなこと思ってたなんて聞きたくなかったんだけど」
「いや、ほんとは仕方なくでファーストキスは捨てられません!って、言いたかったんですけど……!」
「そっちのが何倍も良くない?何で最初の言っちゃったの?」
先輩から何度もつっこまれる。あぁ、奇跡の掛け合いだ。