その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
「ステイシア……?」
 
 リューグの透明な涙を、紙安はそっと拭う。
 不安そうなリューグを安心させる様に微笑みかけ、紙安は最後の言葉を聞かせた。

「必ず、幸せになってね……。私たちの大好きな人……」

 もう、これくらいしかしてあげられないことを歯痒く思う。
 でも、同時にこれでいいのだという思いもあった。

『――よくやった』

 胸の奥から、確かに声がしたから。

(ステイシア……私、ちゃんとやれたよ)

 硬いものが割れるパシンという音と共に、受け取った呪いの欠片は粉々に砕けた。

「ステイシア……いや、君は――」

 目の前のリューグの顔が少しずつ、眩しい陽光に照らされるように見えなくなっていく。
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