その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 ああ、終わるんだ。
 そう思った紙安の頭の中で、もう一つの自分の声がより鮮明に響いてくる。
 
『ありがとう、紙安』
 
 多分、暗闇の世界に戻ることはもうないけれど……。
 ステイシアの存在は、やはりまだわずかに身体の中に残されていたのだ。

(ううん……私、ここに来れてよかった)

 答えはない。
 紙安の魂はこの世界から離れかけているのか、もうこちらからの声は届いていないのかもしれない。

 でも紙安は、確かに達成感を感じていた。
 最後の大仕事をやり遂げたのだ。
 だから、安心していた。

『でも、まだまだよ。お前にはお兄様の幸せを守るって仕事がこれからも、残ってるんだからね』
(え……)

 なのに紙安の――ステイシアの身体に温かいものが流れてくる感じがして。
 それと相反するように、彼女の声は少しずつ、弱くなっていく。
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