その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 そして、紙安自身の意思を汲み、こうして傍に置いてくれている。
 隣に居て彼を支えられる、それだけで、今は十分だ。
 
「リューグは、これから何がしたいですか?」
「俺か? 俺は……そうだな」

 ふとした質問にリューグはこう返す。

「せっかく手に入れた地位だ。せいぜい利用して、この国の行く末を見届けてゆくさ。つらい出来事に囚われ、苦しむ者がこれ以上生まれないように……」

 リューグは遠くに見えるこの王国の象徴を眺めた。
 晶華学園を卒業したルキス王子は王位を継ぎ、フェルメイア王国は新たな世代に入る。

 紙安が反逆者の娘でありながらも、こうしてリューグの傍にいられるのは、彼がルキスと取引してくれたおかげだ。

 きっと彼なりに、今までの出来事にけじめをつけたのだと思う。

 リューグがルキス王子の後ろ盾となり王国に以後も忠誠を尽くす代わりに、あの内乱で罪を被った者たちは赦された。

 その中にはチェリファー侯爵の娘であったレネも含まれている。
 おかげで紙安はレネとして心置きなく新しい人生のスタートを切れたのだ。
< 109 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop