その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~

◆④◆

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 入学初日はつつがなく終了した。
 紙安は学園の外で待っていた馬車で、アロウマーク家へと戻される。

 昼食は手の込んだ西洋風の食事で食べやすかった。
 その後は自由にしていいと言われたので、私室にあった筆記具を手に取り、ここまでの出来事の整理をする。

(私は……本当にステイシア・アロウマークになってしまったの?)

 紙安は自分の頭から伸びる黒髪を掴んで引っ張ってみる。
 頭皮が突っ張るこの感覚が、確かに自分のものだと主張する。
 ほっぺだって手の甲だってつねるとちゃんと痛いし赤くなる。 
 でもこんな女性らしくたおやかな白い手、およそ現実の紙安のものとは似ても似つかない。

(本気の異世界転生だ。でも私に……ステイシアとして生きてきた十六年程の記憶はない。体だけが、それを覚えているって感じか)

 紙安自身はろくにテーブルマナーだって身に付けていない。
 なのに先程は気付けば自然にナプキンを膝に置いて食事をとり、終わった後も何の違和感もなくテーブルへと返していた。
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