その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 苦笑いの雰囲気を感じさせる微笑。
 誰かが近付く気配がする。
 しかし、この身体はそれに驚いたりせず、むしろ歓迎しているようだ。
 
 椅子に座っていた紙安に手が回され、しっかりとした男性の胸に密着する。
 温かい熱が伝わり、心が安らぐとてもいい香りがした。
 甘えてもいい人だと、身体が認識している。

「早速予習でもしていたのか……? お前は昔から、晶還術においては勉強熱心だったからな……ふふふ、偉いぞ」

 抱き上げられた体がベッドに寝かされ、髪を指が梳く。
 そんな何気ない行動にどうしてかとても深い愛情を感じながら、紙安はうっすら目を覚まし。

 やっぱり動揺した。

「リ、リュリュリュッ、リューグお兄様!?」
「おっと、舌を噛むぞ? なんだ、このところ落ち着きがない気がするが……何かあったか?」

 紙安としてはありまくりだ。
 だが、今の自分は彼の妹ではない。
 自分でも把握しきれていないこの状況、どう説明したものか……。
 黙っていると膝立ちになった彼の藍色の瞳がじっとこちらを見据える。
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