その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
「お前、何か変わったか?」
「ななな、何のことでしょう……」

 憧れの推しに息がかかる距離で見つめられ、紙安は身体を離そうとする。
 だが首根っこを押さえられ、距離を取れない。
 そして彼はぐっと身を乗り出す。

(ち、近いよ……。も、もしかして、この世界じゃ兄妹でも挨拶代わりに口づけとかするの……?)

 胸がばくばくと脈打つ中、紙安は体中の血液が顔に集中するのを感じる。
 鼻先が触れ合い、迫ってきたリューグの顔を見ていられない。
 魂が抜けてしまう……!

 ――こつっ。

「顔は赤いが、熱はないようだな、身体につらいところはないか?」
「……いいえ」
「ならいいが……」

 額に受けた軽い衝撃は、単なる熱の確認だった。
 紙安は大変がっかりする。
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