その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
◆①◆
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「あー、疲れたぁ。本当サビ残とか勘弁してよぉ……ふわぁぁあああ~」
午後九時を過ぎた夜の道路に鬱なあくびが響き渡る。
矢束紙安というのが、声の主の名前だ。
丁度二十歳の彼女は、しがない書店の非正規社員として働いている。
(ほ~んと私の人生……これが無きゃ、やってらんないよ)
職場からの帰り道を歩きながら。
紙安はスマホを取り出すと、待ち受けをアニメ調の男性が映るものに切り替えた。黒髪でやや冷たい顔立ちの彼が、穏やかにこちらに微笑みかけている。
これを見るといつもギャップで胸にきゅんと来る。
本当はマスコット付きのキーホルダーも付けたい。
けど、職場の人間には自分の趣味を知られたくない。
給料は雀の涙、かつ休みも月に三、四日。
暇なし金なし出会いなし。
仕事場と家を往復するだけの寂しい毎日。
そんな彼女の人生に唯一の楽しみとして彩りを添えているのがこれ――いわゆる推し活だ。
「あー、疲れたぁ。本当サビ残とか勘弁してよぉ……ふわぁぁあああ~」
午後九時を過ぎた夜の道路に鬱なあくびが響き渡る。
矢束紙安というのが、声の主の名前だ。
丁度二十歳の彼女は、しがない書店の非正規社員として働いている。
(ほ~んと私の人生……これが無きゃ、やってらんないよ)
職場からの帰り道を歩きながら。
紙安はスマホを取り出すと、待ち受けをアニメ調の男性が映るものに切り替えた。黒髪でやや冷たい顔立ちの彼が、穏やかにこちらに微笑みかけている。
これを見るといつもギャップで胸にきゅんと来る。
本当はマスコット付きのキーホルダーも付けたい。
けど、職場の人間には自分の趣味を知られたくない。
給料は雀の涙、かつ休みも月に三、四日。
暇なし金なし出会いなし。
仕事場と家を往復するだけの寂しい毎日。
そんな彼女の人生に唯一の楽しみとして彩りを添えているのがこれ――いわゆる推し活だ。