その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 やはり物語の筋書き通りに彼は王国を滅ぼそうとしている……。
 そう直感した紙安は、気が付くとリューグの身体に取りすがり、懇願していた。

「お兄様……! 暗黒石を使ってフェルメイア王国を滅ぼすなんてこと、止めてください!」
「……――ッ!? ……何故、知っている」

 彼の宵闇のように濃い青の瞳が見開かれる。
 だが彼は下手な言い訳はせず、じっと紙安を睨んだ。
 それにも構わず、紙安は誠心誠意乞う。

「お願いです、お兄様! 復讐などどうだっていいではありませんか!? 国と何十万人もの民を道連れに自らも滅びるなんて馬鹿なこと、止めてください! お願いですから!!」
「暗黒石の存在は……いち貴族の娘が簡単に知れるものではない。ステイシア……いや、お前は……何者なんだ」

 途端にリューグの瞳が不審の色を帯びる。
 手が紙安の肩を強く掴み、まるで敵と出会ったかのような威圧感を与えてきた。
 紙安はどう答えるべき迷ったが、本当のことを話す。

「ごめんなさい。あの入学式の日から、ステイシアさんの身体には私の魂が入っていたんです。私は矢束紙安。信じてもらえないかも知れませんが、別の世界の人間で、火災で死んだ後気づけば妹さんの身体を動かしていました……」
「……ステイシアでは、ないというのか? いや、だが……」
< 33 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop