その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 それが信じられないのかリューグは頭を振ったり、ぶつぶつと独り言を言う。
 紙安は彼の信用を得るため、ステイシアが知り得ない事実を挙げた。

「フェルメイア王国の地下に配置された秘密の宝物庫の一番奥、封印の台座に暗黒石はある。しかしあれには鍵が掛けられているのですよね」
「そこまで…………。少なくとも別の人格ではあると考えざるを得ないようだな。病で体調を崩しがちだったあいつが体の調子を取り戻したのも、そのせいだったというわけか」

 そんな紙安の言葉を聞き、彼はようやく納得したかのように視線を落とした。ステイシアが元気になったと……リューグがあんなにも喜んでいたのは、だからだったのだ。
 物語でステイシアがロゼに敗北し、退場後一度も姿を現さないのも、その病魔が進行したせいなのだろう。

「まあいい。どの道あいつは俺が行動を起こす前に別の国に送らせるつもりだった」
「うっ!」

 まるで別人だと思えるような冷たさがリューグの瞳に宿る。
 紙安の身体はベッドの上に強く突き放された。

「お前にも同じ未来をたどってもらう。その存在で俺の計画を狂わされても叶わないからな。もう……二度と会うこともあるまい」
「待っ――」
< 34 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop