その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
「貴様がステイシア・アロウマークか……」

 すでにそこも何人もの兵士に固められていた。
 彼らの甲冑には見覚えがある。
 フェルメイア王国で正式採用されている品。
 そして中から、一人の青年が進み出る。
 彼が被っていたフードを取り、その姿が現わになった。

「あなたが……なぜ」

 かつてのフェルメイア王国の世継ぎ、ルキス・ディアント・フェルメイア。
 彼がどうしてここにいるのか……。
 長い白金色の髪に隠れたその頬には、呪いにむしばまれたような醜い傷が走っている。

「全ての宝石の中で最大の硬度を持つダイアモンドの加護により、私はかろうじて命を取り留めたのだ。しかし……多くの民は助からず、もはやフェルメイアに国として復興する力は残っていない」

 ルキスもまたやつれ、立っているのも辛そうなのに。
 彼は腰から剣を抜くと、紙安に覚悟の籠った目で突き付ける。
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