その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 そのための準備は万端。
 家に帰ったら、即風呂食事。
 そして仮眠までとって、深夜の配信直後から一気に全クリまで駒を進める予定でいた。

「はぁぁ、またあの渋く切ない表情が拝めるなんて……! しかも今回はフルボイス……」

 先程待ち受けに設定した、今の紙安の最推し。
 このリューグ・アロウマークというキャラは、実は悪役だ。
 ある王国を救おうとする主人公であるヒロインと、ヒーローたちの前に最終ボスとして立ちはだかる。

 しかしそれには悲しい理由があり、実はかつてその王国に処断された一家の復讐のために戦っている。

 黒を基調としたその大人っぽいルックスと要所要所に挟まれた渋い声。
 それらは発売当時、多くのファンを魅了し動かした。

 リューグ編を是非作って欲しいという熱烈な要望のみならず、匿名者からの高額のお布施まで寄せられて、結果満を持して製作されたこの話。
 ファンとしては楽しみにしないわけがない。
 紙安も何度も見返して余韻に浸ろうと、溜め込んだ有給休暇まで使用し、貴重な三連休を確保した。
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