その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 悲痛な表情でこちらをなおも気遣うロゼ。
 もう彼女を苛めなくても済む紙安は内心で安堵しつつ、物語通りの言葉を吐く。

「お前さえいなければ……。お前の光が私を影へと堕としたのよ! ロゼ、お前が邪魔だ……私の目の前から消えてしまえ!」

 すらすらと言葉が出てくるのは、熱烈なファンであった記憶の賜物か。
 それとも、この身体に宿るステイシアの魂が言わせているのか。
 ステイシアとなった紙安は、結末を知りながらも全力でロゼにぶつかっていった。

 それから数十分後……。

「私の負けね……」

 激闘の末、ロゼの足元に紙安は這いつくばっていた。
 そんな彼女に、ロゼは真珠の力で癒しを与えようとする。
 その手を振り払い、紙安はぎこちなく立ち上がると背を向けた。

「さよなら」
「ステイシア! 私は、あなたとも……」

 ロゼが紙安の覚悟を見て取ったように、引き留めようとした口を閉じる。
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