その推し、死なせません～悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う～

「あの……あなたですか？　ここへ呼び出したのは？」
「……ん、なんだ？」

　突然話しかけられたことでやや苛立ちを見せつつ、カイラスが返事を返す。

「俺はお前など呼び出したりしていない」
「でも……他に誰も来ませんし、相談したいことがあるって」
「静かにしろ。うるさくするならどこかへ行け……！」

　そこで丁度リューグが現れ教職員や生徒と会話しながら通路を横切っていく。ちらりと彼の目が隠れていた自分に向けられたが、紙安はなんでもないと苦笑いしながら手を振ることでやり過ごす。

　その間にも、カイラスとロゼの言い争いは過熱していた。

「う、うるさくなんてしてないじゃないですか！　なんなんですかそんな偉そうに……あなたこそ人を待つのでないならどうして、こんなところでじっと立ってるんです！　怪しいですよ！」
「やかましい！　俺には重要な使命があってここにいるんだ！　ったく、これだから女は嫌いなんだ……」
「そ、その発言は女性を馬鹿にしてます！」
「お前が悪い！」
「あなたの方こそ、謝罪して下さい！」
（え、険悪。こんな感じの出会いだったかな……まあいっか）