その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 お互いに感情的になって騒ぎ出す二人の姿を見ながら、紙安は小さくガッツポーズ。一応これで多分、カイラスルートに突入したはず。接点が繋がれた後は二人がリューグの足跡を追うのを見ていればいい。
 彼が宰相たる地位を保つため、貴族に賄賂を贈った証拠を見つけたり。宝物庫にある暗黒石の封印を解くために必要な、三種の鍵を手にしようとする兄を邪魔するところを……。

「ん……?」

 そこでふと紙安は考えた。
 暗黒石の封印には三つの鍵が必要で、それはフェルメイア王国各地の有力な諸侯が管理している。それを自分が手にすることが出来れば……もしやフェルメイア王国の破壊は阻止できる?

(……いや、無理ね)

 いい考えかと思ったが、今からそれをやろうとするのは厳しい。
 まず、物語のどの時点でリューグがそれを揃えたのかが不明だ。
 よしんばそれが判明したとして、彼に知られずに長期間フェルメイアの王都を離れるのも困難。彼が納得のいくような、長期間の旅行を行う理由が紙安には作れない。

 そして仮に、無理に強行し、その二点をクリアできたとする。
 そうまでしても、ステイシアはただの貴族の娘だ。こんな少女が頼み込んだところで、諸侯方が大事な封印の鍵なぞ見せてくれるはずもない。
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