その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 ……では、時期を見計らってリューグ本人から鍵を奪う?
 これも、いや、むしろこちらの方が難易度が高い。リューグは、国内で恐らく最強の晶還術の使い手だ。
 それと黒曜石の加護というふたつの条件をもってして、リューグは暗黒石を起動することが出来た。
 主人公たちが四人がかりでようやくどうにか倒せた相手を、紙安如きにどうにかできるはずもない。

 よって、今のこの行動がベスト。
 そう信じ、紙安はしばしカイラスたちの行動を見守ることを決めた……。

 
 ――そして、二人の出会いから数か月が過ぎた、ある夜更け。
 アロウマークの屋敷の中は慌ただしくなっていた。
 リューグの不在時、当家に何者かが侵入したというのだ。
 賊が荒らしたのは、主にリューグの書斎の周辺らしい。

 もちろんこのイベントも、紙安の記憶にははっきりとある。
 カイラスとロゼが、リューグの罪の手掛かりを掴むために行動したのだ。

 止めることは出来たが、見て見ぬ振りを貫いた。
 そして素知らぬ顔で後で姿を現した紙安は、片付けようと動く侍女たちに混じり、室内を見回す。

(わぁぁぁぁぁ……!)
< 68 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop