その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 手を握り合った二人の合体技。
 二色の晶還術を纏い、大きな槍となった二人がリューグの身体を突き飛ばす。
 推しの窮地に飛びだしたくなるのを必死にこらえつつ、戦いを見守る紙安。

 しかしそれでも、彼は倒れなかった。

「はあ、はあ……。まだだ、こんなもので私は倒れん……倒れるわけにはいかんのだ!」
「もう止めてください、理事長!」
「もう勝負は決した! このままやれば、命を落とすだけだぞ……」
 
 立ち上がるのがやっとで、見るからにぼろぼろの姿。
 カイラスたちから必死の説得が飛ぶが、リューグは従わず不敵に笑う。
 
「……ふふふ、もはや仕方あるまい。封印は完全に解けてはいないが、それでも今起動すればこの国土の半分は破壊できる。十分だろう……」

 リューグの手が宝物庫の奥、台座に据えられた宝玉へ添えられた。
 妖しい黒色の力が注ぎ込まれ、それを見たカイラスの判断は素早く――。

「王国の民を危険に晒すわけにはいかない! 覚悟!」

 彼は剣を抜くと、疲労が窺える足取りで駆けてゆく。
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