その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 今二人の間に割り込むべきだ……紙安はそう感じた。
 だが、出来なかった。

(足が……う、動いてよ)

 足の付け根から下が、まるで凍らされてしまったかのようだ。
 カイラスの剣が、一周目のルキスに身体を切り裂かれた時の恐怖を思い起こさせた。トラウマが大きく身体を縛る。呆然とする紙安。

『――なにやってる! 行け!』

 頭の中で鋭く声が響いてハッとした。
 呪縛が解けるも、もう晶還術を唱える余裕も無い。

「やめてっ!」
「「なッ――!?」」

 力の限り走り、リューグにぶつかるようにして、剣を振りかぶったカイラスの前に飛び込む。
 背中が大きく斬られ、紙安はリューグの腕の中に倒れ込んだ。

「ステイ……シア? ステイシアっ! な、なぜ……!?」
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