その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
「ロゼ、癒しを!」
「やってみます、けど……!」

 誰かの叫びにロゼが反応し、癒しの晶還術を試みる。
 だが、全力を出し切った後の光は弱々しく、傷が塞がらない。

「どうしてなんだ! どうして……お前がここにいるっ! お前だけは巻き込みたくなかったのに!」
(き、聞かなきゃ……ロゼが命を繋ぎ止めてくれているうちに)

 背中は熱く、息は苦しい。
 だが周囲からは冷酷非道とも評されるリューグが、今は物凄く動揺している。
 チャンスを生かすべく、懸命に息を震わせ、紙安は彼に尋ねた。

「お、兄様……。お願い、です。最後に……どうして、あなたが……ここまでしなければならなかったのか、教えて……下さ、い」
「そんなこと、今はどうでもいいだろう! 喋ろうとするな!」
「……見て、しまったのです、あの古き日の肖像画を」

 リューグの目が見開かれる。
 口の端から血を垂らし、命懸けで訴えかける紙安の想いをリューグは察してくれたのか……。

 彼はぐっと眉を寄せ、そして口を開いた。
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