その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~

◆②◆

◆②◆
 
 言葉が出ない。
 なんせ、憧れの推しの、しかも実体が肉体を伴って目の前に存在している。

 彼の手が伸び、紙安の頬を撫でた。

「どうした……まだ寝惚けているのか?」
(っひゃぁぁぁぁぁぁああああ……!)

 大きくひんやりとした、すべすべの手が自分の顔を撫でる感触。
 危うく紙安は昇天しそうになる。
 それに、とんでもなくいい香りがする。
 もう少し紙安の鼻が弱かったら鼻血でも吹き出していたかもしれない。

「困ったな。俺はこれから王城に赴かなければならないから、お前の入学式には出席してやれないのだ。ステイシア、兄として私はお前があの学校で頑張ってくれることを期待しているのだがな?」
(あああああああ…………。ん、ステイシア?)

 リューグがベッドサイドに座り、さらに距離が近づく。
 紙安は興奮しつつもやっとそこで、自分が自分で無いことに気付く。
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