その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 リューグは伸ばされたロゼの手を弾き飛ばし、その場を駆け去って行く。
 それをロゼは呆然とした表情で見送り、追いかけもしない。

 ついさっきまで上手くいっていた二人に……一体、何が起きたのか。
 紙安にそれを窺い知ることは出来ず、彼女は兄の後を追った。


 それ以来、リューグは頑としてロゼと会おうともせず、ロゼもまた沈んだ顔で紙安の誘いを断るようになった。

 このままではいけない――。
 そう思った紙安は学園でロゼにあの時なにが起こったのかを訊く。
 すると彼女は、神妙な表情で顔を上げる。

「リューグさんは、強い闇の思念に取りつかれているのね……。一瞬だけど、あの方の胸元に絡みついた鎖が見えた」

 やはり、ロゼにも紙安と同じものが見えたのだ。
 リューグはこのままロゼといて自らの復讐の念が弱まり、やがて呪いが浄化されてしまうことを無意識に危惧した、そうとしか考えられない。

 裏を返せば、この方法ならリューグを本当に救えるのかもしれない……!
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