その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 会場となった大講堂で、大きく歓声が上がった。

 特別に飲食物などが用意され、立食パーティー形式となって賑わう会場。
 その中で紙安とロゼは、来賓や生徒に囲まれるリューグの対応が終わるのを待つ。

 壁際で冷えたグレープジュースを飲みながら雑談を交わしていると、ロゼがある時、口元を隠すようにして囁いてきた。

「……もしかして、ステイシアはこの世界の人じゃないの?」
「ごほっ!? げほっ……」
「ご、ごめん……!」

 いきなりの言葉に、紙安は器官がつまってむせる。
 わずかにドレスに掛かったが、幸い生地もダークパープル。
 さして目立たなそうで安堵する。

「……どうしてそう思うの?」
「なんとなく。私が新たな力を得た後、あなたの身体とその髪飾りに……私たちが神様に祈る時に表れる光とよく似たものが見えるようになったから」
「そう……なの?」

 ロゼの目には確信がある。
 紙安の胸で、ここまで彼女を利用しながら何も教えなかった良心の呵責が疼き……。信じてもらえるかは別として、自分がこの世界に来たいきさつを話すことにした。
「貴方の言う通りよ、私はこことは違う世界の人間。そこでは、この世界の出来事とほとんど同じような物語が作られていてね。その繋がりがどう作用したのかは分からない……でも私は本当のステイシアに呼ばれて魂だけがこちらに来たんだ。そして彼女は、お兄さんを助ける役目を私に託してくれた」
「そんなことが……」
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