その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 常識的に考えれば冗談だと思われても仕方のない内容だが……ロゼは紙安の言葉を疑わずに受け入れてくれる。

「信じがたいけれど、でもあなたがリューグさんを本当に大事に思っていることは分かるわ」
「……それは、うん。それだけは、自信を持って言えるよ」

 紙安は顔を赤くしつつもしっかりと頷く。
 ロゼの意味ありげな微笑みに、なんだか自分の気持ちを見透かされているようで……。
 照れながらも紙安は、真剣にロゼの瞳を見つめた。

「だからお兄様を……リューグのこと、お願いね」
「うん……」

 理事長であり、権力者であるリューグの傍には人波が絶えない。
 二人はそれが引くのを辛抱強く待つ。
 やがて一段落した頃、紙安は晶還術で自分とロゼの姿を隠し、ひっそりと彼に近付く。

 そして……タイミングを見計らい、紙安はリューグに後ろから飛びついた。

「ステイシア!? どうしたいきなり……」
(今よ……!)

 目線で指示を送るとロゼは、真正面からリューグに駆け寄り、素早く晶還術を唱える。
< 93 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop