その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 苦しむことを覚悟で、紙安はあの時の体験を思い返した。

 恐るべき呪いだ。ロゼの聖なる力での浄化は叶わず、自分の意思で動いたかのように、助けに入ろうとした彼女を弾き飛ばした。

 でもあの時、呪いは紙安だけを拒まなかった。

(彼の事を知った今の私なら……あの呪いに触れられる!)

 確信に近い閃きが、リューグの胸元に手を伸ばさせ。
 そして、そっと呪いの鎖の内、一本に触れた。

(――――っ!)

 ――パキッ。
 小さな破砕音と共にするりとそれは解け、紙安の中に入り込む。
 胸の中を黒く熱いものが暴れ回る。 
 
(ううっ……!)
「ステイシア……どうかしたか?」
「……いいえ」

 かろうじてそれを抑え込み、握りしめた手に汗を滲ませながらも紙安はなんとか微笑む。
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