俺様御曹司からは逃げられません!
ひったくりといい、本当にツイていない。
今が天中殺の時ってやつなんだろうか。
占いはあまり信じない性質だが、こうも立て続けに降りかかる不運に対する根拠がなければ、自棄を起こしてしまいそうだった。
実際、財布から次々に羽ばたいていく紙幣を見送るのは、かなり精神的にクる。
と、つい自分の世界に没入して不運を嘆いていたのだが、「えー!!」と可愛らしい抗議の声が下から聞こえてきて、ふと意識が現実に引き戻される。
「柊くん、絢にいちゃんとコスモレンジャーみたかったのに!」
「悪い、柊吾。俺は宮下先生と大事なお話があるんだ。コスモレンジャーはまた今度見に行こう。約束だ」
(はい……?大事な、話……?)
考え事をしている間にどうやら話が進んでいたらしい。しかも当事者らしき楓は置いてけぼりだ。訳が分からない。
楓が目をしきりに瞬かせているうちに、絢人と柊吾は今日の約束を反故にしてしまう代償についての交渉を始めている。
交渉は、今度絢人がコスモレンジャーの必殺武器、メテオコスモソードを買うことで決したらしい。
柊吾は母と手を繋いで「ぜったいだよー!」と念を押しながら、この場を去って行った。
これは一体、どういうことだろう。
「あの、大事な話ってなんですか……?」
緊張の面持ちで楓は絢人を見上げた。
だが彼は楓ではなく、その後ろにチラリと視線を投げる。すると、どこからか一人の男性が現れてこちらへ近づいてきた。よく見るとそれは、私服姿のお付きの人――佐伯だった。
絢人は佐伯に何かを耳打ちしている。密談が終わると佐伯は首肯し、すぐさまその場から立ち去っていった。
先程から楓は全く状況が把握できていない。頭の中は疑問符で占拠されている。
「行くぞ、楓」
言うよりも早く、絢人は楓の手を取り歩き始めた。前回と変わらず彼は強引で、楓はたたらを踏みながらもなんとかついていく。
大きくて骨張った、分厚い男の人の手の感触が己の手のひらから伝わり、楓の胸がトクリと高鳴った。
今が天中殺の時ってやつなんだろうか。
占いはあまり信じない性質だが、こうも立て続けに降りかかる不運に対する根拠がなければ、自棄を起こしてしまいそうだった。
実際、財布から次々に羽ばたいていく紙幣を見送るのは、かなり精神的にクる。
と、つい自分の世界に没入して不運を嘆いていたのだが、「えー!!」と可愛らしい抗議の声が下から聞こえてきて、ふと意識が現実に引き戻される。
「柊くん、絢にいちゃんとコスモレンジャーみたかったのに!」
「悪い、柊吾。俺は宮下先生と大事なお話があるんだ。コスモレンジャーはまた今度見に行こう。約束だ」
(はい……?大事な、話……?)
考え事をしている間にどうやら話が進んでいたらしい。しかも当事者らしき楓は置いてけぼりだ。訳が分からない。
楓が目をしきりに瞬かせているうちに、絢人と柊吾は今日の約束を反故にしてしまう代償についての交渉を始めている。
交渉は、今度絢人がコスモレンジャーの必殺武器、メテオコスモソードを買うことで決したらしい。
柊吾は母と手を繋いで「ぜったいだよー!」と念を押しながら、この場を去って行った。
これは一体、どういうことだろう。
「あの、大事な話ってなんですか……?」
緊張の面持ちで楓は絢人を見上げた。
だが彼は楓ではなく、その後ろにチラリと視線を投げる。すると、どこからか一人の男性が現れてこちらへ近づいてきた。よく見るとそれは、私服姿のお付きの人――佐伯だった。
絢人は佐伯に何かを耳打ちしている。密談が終わると佐伯は首肯し、すぐさまその場から立ち去っていった。
先程から楓は全く状況が把握できていない。頭の中は疑問符で占拠されている。
「行くぞ、楓」
言うよりも早く、絢人は楓の手を取り歩き始めた。前回と変わらず彼は強引で、楓はたたらを踏みながらもなんとかついていく。
大きくて骨張った、分厚い男の人の手の感触が己の手のひらから伝わり、楓の胸がトクリと高鳴った。