俺様御曹司からは逃げられません!
絢人の足は迷いなくモール内の大型家電量販店へと向かっていた。
入り口まで来て、楓は思わず足を止める。
「なぜここに……」
「電子レンジ買うんだろ?」
「買いますけど……もしかしてついてくるんですか?」
「なんだ、不服なのか?」
「いえ、そういうわけじゃ、ないですけど……」
ただ、明らかに絢人は場違いである。
今日の絢人の格好はシャツにチノパンという軽装であるが、明らかに量販店の品とは一線を画した洗練されたデザインだ。そしてそれをモデルのように完璧に着こなしている。
加えて人目を引く美しい容姿と、滲み出る高貴なオーラ。
陽気なBGMを奏でる雑多な店内と全くもって調和していない。
しかし本人はまるで気にしていない様子だ。むしろ、早くしろと楓を怪訝そうに見下ろしている。
どうして楓の買い物に付き合うのか、相変わらず彼の意図は全く読めない。
だが引き下がりそうもないので、仕方なく楓は絢人を引き連れて家電コーナーへ赴くことにした。
多種多様な電子レンジがズラリと並んだ中で、楓が選んだのは温め機能だけを備えたシンプル且つリーズナブルな一品だった。
絢人は高性能で高価格なスチームオーブンレンジを勧めてきたが、もちろんそんな代物は買えるはずもなく、秒で却下した。
渋々楓の決断に従った絢人だったが、何故か楓に代わって電子レンジを購入しくれた。
「楓。この後の予定は?」
一万円の電子レンジをブラックカードで支払った絢人が、楓にそう訊ねてくる。
いくばくか逡巡して、家に帰るだけだと素直に告げると、彼は口の端をニッと上げた。
「じゃあ今度は俺に付き合え」
そう言ってタクシーに放り込まれても、楓はもう驚かなかった。なんとなくそんな流れになるのかなという予感すらしていたからだ。
ただ、絢人の真意が分からない。
一連の行動は全て彼の気まぐれなんだろうか。大事な話というのは方便で、単に庶民の生活を覗き見たかっただけなのかもしれない。
だから、特別な意味なんてないのだ。
そう言い聞かせて、楓はふわふわと浮き立つ心を必死で諌めていた。
入り口まで来て、楓は思わず足を止める。
「なぜここに……」
「電子レンジ買うんだろ?」
「買いますけど……もしかしてついてくるんですか?」
「なんだ、不服なのか?」
「いえ、そういうわけじゃ、ないですけど……」
ただ、明らかに絢人は場違いである。
今日の絢人の格好はシャツにチノパンという軽装であるが、明らかに量販店の品とは一線を画した洗練されたデザインだ。そしてそれをモデルのように完璧に着こなしている。
加えて人目を引く美しい容姿と、滲み出る高貴なオーラ。
陽気なBGMを奏でる雑多な店内と全くもって調和していない。
しかし本人はまるで気にしていない様子だ。むしろ、早くしろと楓を怪訝そうに見下ろしている。
どうして楓の買い物に付き合うのか、相変わらず彼の意図は全く読めない。
だが引き下がりそうもないので、仕方なく楓は絢人を引き連れて家電コーナーへ赴くことにした。
多種多様な電子レンジがズラリと並んだ中で、楓が選んだのは温め機能だけを備えたシンプル且つリーズナブルな一品だった。
絢人は高性能で高価格なスチームオーブンレンジを勧めてきたが、もちろんそんな代物は買えるはずもなく、秒で却下した。
渋々楓の決断に従った絢人だったが、何故か楓に代わって電子レンジを購入しくれた。
「楓。この後の予定は?」
一万円の電子レンジをブラックカードで支払った絢人が、楓にそう訊ねてくる。
いくばくか逡巡して、家に帰るだけだと素直に告げると、彼は口の端をニッと上げた。
「じゃあ今度は俺に付き合え」
そう言ってタクシーに放り込まれても、楓はもう驚かなかった。なんとなくそんな流れになるのかなという予感すらしていたからだ。
ただ、絢人の真意が分からない。
一連の行動は全て彼の気まぐれなんだろうか。大事な話というのは方便で、単に庶民の生活を覗き見たかっただけなのかもしれない。
だから、特別な意味なんてないのだ。
そう言い聞かせて、楓はふわふわと浮き立つ心を必死で諌めていた。