俺様御曹司からは逃げられません!
佐伯に案内されたのは、このホテルで二番目に格が高い部屋――デラックスパノラマスイートだった。
まず目に飛び込んできたのは、革張りのコーナーソファが設置された、白を基調としたモダンなリビングルーム。壁一面の窓からは、そびえ立つ東京の高層ビル群を一望できる。
圧巻の眺望と、ラグジュアリーな空間に楓は目を奪われた。入ってすぐ目にするのがベッドじゃないことに感激し、部屋中をくまなく探索したい衝動に駆られる。
だが、ツカツカとリビングルームへ突き進んでいく佐伯はそれを許してくれなさそうだ。彼の背に続いて楓も部屋の奥へ足を運ぶ。
玄関からは死角になっていた箇所には、様々なデザインのワンピースが掛けられたハンガーラックと、アクセサリーが並べられたワゴンが置かれていた。その隣には百貨店の美容部員を彷彿とさせる雰囲気の女性が美麗な笑みを浮かべて佇んでいる。
「えーっと……」
困惑した楓が佐伯に視線を送ると、振り返った彼はにっこりと人の良い笑みを浮かべた。
「絢人様からの贈り物です。この中からお好みのものにお召し替えください」
「えっ?これ、私にですか?!」
「さようでございます。大急ぎでかき集めましたから」
彼はくたびれたように肩をすくめた。
恐らくイリスモールで佐伯が姿を現したあの時に、絢人から指示されたのだろう。
それから二時間も経っていない中で、これだけの衣服や小物を集めて運んだのだ。虚な瞳からは彼の苦労が偲ばれる。
「すみません、色々と用意していただいて……」
「いえ。絢人様のご要望に応えるのが私の仕事です。楓様が気にする必要はないですよ。それに、時機が早まっただけですから」
意味深に微笑むと、佐伯は後ほど絢人が訪れるとだけ言い残し、スイートルームから立ち去っていった。
まず目に飛び込んできたのは、革張りのコーナーソファが設置された、白を基調としたモダンなリビングルーム。壁一面の窓からは、そびえ立つ東京の高層ビル群を一望できる。
圧巻の眺望と、ラグジュアリーな空間に楓は目を奪われた。入ってすぐ目にするのがベッドじゃないことに感激し、部屋中をくまなく探索したい衝動に駆られる。
だが、ツカツカとリビングルームへ突き進んでいく佐伯はそれを許してくれなさそうだ。彼の背に続いて楓も部屋の奥へ足を運ぶ。
玄関からは死角になっていた箇所には、様々なデザインのワンピースが掛けられたハンガーラックと、アクセサリーが並べられたワゴンが置かれていた。その隣には百貨店の美容部員を彷彿とさせる雰囲気の女性が美麗な笑みを浮かべて佇んでいる。
「えーっと……」
困惑した楓が佐伯に視線を送ると、振り返った彼はにっこりと人の良い笑みを浮かべた。
「絢人様からの贈り物です。この中からお好みのものにお召し替えください」
「えっ?これ、私にですか?!」
「さようでございます。大急ぎでかき集めましたから」
彼はくたびれたように肩をすくめた。
恐らくイリスモールで佐伯が姿を現したあの時に、絢人から指示されたのだろう。
それから二時間も経っていない中で、これだけの衣服や小物を集めて運んだのだ。虚な瞳からは彼の苦労が偲ばれる。
「すみません、色々と用意していただいて……」
「いえ。絢人様のご要望に応えるのが私の仕事です。楓様が気にする必要はないですよ。それに、時機が早まっただけですから」
意味深に微笑むと、佐伯は後ほど絢人が訪れるとだけ言い残し、スイートルームから立ち去っていった。