俺様御曹司からは逃げられません!
あと五分ここにいて、それでも見つからなかったら今日は諦めて帰ろう。
そう思って顔を上げた時だった。
「ああーーーーー!!!」
楓の絶叫が夜のビジネス街に響き渡る。
何事か、と通行人が次々に足を止め、怪訝そうな顔で楓を見つめてくるが、それどころではない。
なぜならついに、この一ヶ月間探し求めていた人物を見つけてしまったのだから。
楓は周囲に憚ることなく、目当ての人物に突進していく。
彼もまた、楓の奇行に驚いて足を止めているようだった。
これ幸いとばかりに楓は近づいていき声を掛けようとした。
だが突如として目の前に黒い壁が立ちはだかり、楓の思惑は阻止されてしまう。
「失礼。こちらの御方に何かご用でしょうか?…………おや?」
壁はよく見たらブラックスーツを身に纏った男性――イケメンのお付きの人だった。
お付きの人も楓に見覚えがあるのか、不思議そうに目を瞬かせている。
「突然すみません。私、先月ひったくりから助けていただいた者で……」
「ああ!あの時の。その後は大丈夫でしたか?」
「はい、おかげさまで。本当にありがとうございました。それで、あの時いただいたお金をお返ししたくて……」
逃げられないうちに楓は鞄から手早く封筒を取り出し、二人の顔を交互に見ながら献上する。
すると、お付きの人は困惑した表情で背後にいる主人を仰ぎ見た。
イケメンは理解不能と言いたげに眉根を寄せ、楓を冷たく睥睨している。
(あ、あれぇ……?)
どんなに好意的に解釈をしようとしても、おおよそ歓迎しているとは言い難い反応に楓もたじろいだ。
何が彼の気分を害してしまったのか分からず、おろおろと視線を彷徨わせる。
夜のビジネス街は人で賑わっているはずなのに、楓の周りだけはシンと静まり返っていた。
そう思って顔を上げた時だった。
「ああーーーーー!!!」
楓の絶叫が夜のビジネス街に響き渡る。
何事か、と通行人が次々に足を止め、怪訝そうな顔で楓を見つめてくるが、それどころではない。
なぜならついに、この一ヶ月間探し求めていた人物を見つけてしまったのだから。
楓は周囲に憚ることなく、目当ての人物に突進していく。
彼もまた、楓の奇行に驚いて足を止めているようだった。
これ幸いとばかりに楓は近づいていき声を掛けようとした。
だが突如として目の前に黒い壁が立ちはだかり、楓の思惑は阻止されてしまう。
「失礼。こちらの御方に何かご用でしょうか?…………おや?」
壁はよく見たらブラックスーツを身に纏った男性――イケメンのお付きの人だった。
お付きの人も楓に見覚えがあるのか、不思議そうに目を瞬かせている。
「突然すみません。私、先月ひったくりから助けていただいた者で……」
「ああ!あの時の。その後は大丈夫でしたか?」
「はい、おかげさまで。本当にありがとうございました。それで、あの時いただいたお金をお返ししたくて……」
逃げられないうちに楓は鞄から手早く封筒を取り出し、二人の顔を交互に見ながら献上する。
すると、お付きの人は困惑した表情で背後にいる主人を仰ぎ見た。
イケメンは理解不能と言いたげに眉根を寄せ、楓を冷たく睥睨している。
(あ、あれぇ……?)
どんなに好意的に解釈をしようとしても、おおよそ歓迎しているとは言い難い反応に楓もたじろいだ。
何が彼の気分を害してしまったのか分からず、おろおろと視線を彷徨わせる。
夜のビジネス街は人で賑わっているはずなのに、楓の周りだけはシンと静まり返っていた。