茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
「申し訳……ありません……」
陽翔は頭を下げる深山に目を見張る。まさかここで謝罪の言葉が深山から出るとは思わなかったからだ。許すつもりは無いにしても、少しは良心というものが残っていたのだろうか。
(いや、こいつに限ってそんなことはないか。良心あるなら浮気なんて裏切りをする筈がない)
「その気持ちがあるのなら、もう一度言いますが今後一切百子に関わらないで下さい。貴方に復縁を迫られた日に百子は泣いてました。浮気をされた自分をひたすらに責めていたし、裏切られることをひどく怖がっていました……本当に貴方が関わるとろくなことにならない」
「はい……約束します。だからその映像を職場にバラまくことと、取引中止にだけはどうか……!」
陽翔は流石に眉を顰めて拳を握りしめる。どうやら先程の謝罪は保身から来たらしい。弱味を握られて立場が悪い深山から交渉されるのは陽翔の考慮の外だった。
「先程の謝罪は一体誰に対しての謝罪なんでしょうね? 深山さん。別に俺はバラまくつもりは無かったのですが、そう言われると何かやってみたくなりますね」
しかし人間というものは、怒りや悲しみを極限まで膨れ上がらせてメーターを振り切ってしまうと笑うしかできないようになっているようだ。陽翔はにっこりと笑いながら抑揚の無い声で告げたのだが、表情と声音に恐れをなした深山の顔からは血の気が引きまくっていてほとんど白に近くなっていた。
「それだけは……っ!」
深山が縋るのが何だか奇妙に感じられたが、陽翔は笑みを崩さない。余計に不気味だと思われたのか、深山が息を呑む気配がした。
「貴方の態度次第にしましょうか。もう一度いいます。今後一切百子には関わらないで下さい。それを約束して下さるのならバラまきませんし貴方とは仕事以外で関わらないことを約束しましょう」
深山は首を縦に何度も振ったので、陽翔は財布を鞄から取り出し、一万円札をテーブルに置いた。
「契約成立ですね。ちなみに俺達の会話は全部録音してますからそのつもりで。あ、言い忘れてましたが仕事の時に私情は持ち込むつもりはありませんのでご安心を。今後とも良い関係が持続できたらいいですね。ではお先に失礼致します」
陽翔は深山を振り返らずに足早に店を出た。
陽翔は頭を下げる深山に目を見張る。まさかここで謝罪の言葉が深山から出るとは思わなかったからだ。許すつもりは無いにしても、少しは良心というものが残っていたのだろうか。
(いや、こいつに限ってそんなことはないか。良心あるなら浮気なんて裏切りをする筈がない)
「その気持ちがあるのなら、もう一度言いますが今後一切百子に関わらないで下さい。貴方に復縁を迫られた日に百子は泣いてました。浮気をされた自分をひたすらに責めていたし、裏切られることをひどく怖がっていました……本当に貴方が関わるとろくなことにならない」
「はい……約束します。だからその映像を職場にバラまくことと、取引中止にだけはどうか……!」
陽翔は流石に眉を顰めて拳を握りしめる。どうやら先程の謝罪は保身から来たらしい。弱味を握られて立場が悪い深山から交渉されるのは陽翔の考慮の外だった。
「先程の謝罪は一体誰に対しての謝罪なんでしょうね? 深山さん。別に俺はバラまくつもりは無かったのですが、そう言われると何かやってみたくなりますね」
しかし人間というものは、怒りや悲しみを極限まで膨れ上がらせてメーターを振り切ってしまうと笑うしかできないようになっているようだ。陽翔はにっこりと笑いながら抑揚の無い声で告げたのだが、表情と声音に恐れをなした深山の顔からは血の気が引きまくっていてほとんど白に近くなっていた。
「それだけは……っ!」
深山が縋るのが何だか奇妙に感じられたが、陽翔は笑みを崩さない。余計に不気味だと思われたのか、深山が息を呑む気配がした。
「貴方の態度次第にしましょうか。もう一度いいます。今後一切百子には関わらないで下さい。それを約束して下さるのならバラまきませんし貴方とは仕事以外で関わらないことを約束しましょう」
深山は首を縦に何度も振ったので、陽翔は財布を鞄から取り出し、一万円札をテーブルに置いた。
「契約成立ですね。ちなみに俺達の会話は全部録音してますからそのつもりで。あ、言い忘れてましたが仕事の時に私情は持ち込むつもりはありませんのでご安心を。今後とも良い関係が持続できたらいいですね。ではお先に失礼致します」
陽翔は深山を振り返らずに足早に店を出た。