茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
百子は口を引き結び、眉を寄せれるだけ眉間に寄せた。彼の話が百子の想像以上に悲惨だということもあるし、その時の彼の気持ちを想像しただけで、彼の元婚約者に対して胸の奥から怒りがせり上がってきたからだ。
「陽翔、話してくれてありがとう……本当に何て人なのかしら! 人との約束を破っておいて何も思わないの?! 信じらんない! そんな人と縁が切れて本当に良かったわ。今なら私も陽翔の気持ちが分かる。私、何ならその人の舌を引っこ抜いて喉を潰してやりたいし」
百子のいまだかつてないほどの低い声に、陽翔はぎょっとして彼女を見た。憤怒にきらめいているその瞳は彼の方を見ていない。
「百子、それはいくらなんでも……」
「あら、嘘ついた口は厳重に罰しないとだめじゃない」
憤怒でギラつく瞳がしっかりと陽翔を捉え、さらにとんでもないことを言ったため、陽翔は百子に覆いかぶさり、強引に彼女の唇を自分の唇で塞ぐ。
「言ってみただけじゃないの……実際やるかは別なのに」
唇が離れたので百子は顔を横に向け、罰の悪そうな顔でぶつぶつと告げたが、陽翔は大きくため息をこぼす。
「その割には目が本気だったぞ……」
陽翔はヒヤヒヤしながら百子の額にキスを落とした。まさか百子がここまで自分のことで感情を大きく動かすとは思ってもみなかったのだ。そのことが何だか無性に嬉しく、彼は頬にも唇を押し当てた。
「こんなこと言うのも何だけど、俺のために百子が怒ってるの、すげー嬉しかった。俺はまだあいつに恨みがあるが、そのおかげで百子と会えたのも事実だからな。感謝はできないにしても、悪いことじゃないのかもしれん」
百子は一瞬ポカンとしていたが、陽翔の首に両手を回し、そのまま彼に触れるだけの口づけをした。彼が一度体を起こし、百子を抱き上げて膝の上に乗せたので百子はさっと顔を赤くしていたが、彼の首に腕を回した。
「そうだ、陽翔……ちょっと聞きたいことがあって……」
歯切れの悪い百子に陽翔は首を傾げたが、迷わずに続きを話すように促すと、百子は言葉を選んでいるようでゆっくりと話し始めた。
「あのさ、例えばだけど……その人が陽翔に謝罪してきたら許す?」
「いや、許せねえな。許せる訳がない。今更謝られたって、俺のあの時の気持ちが消える訳でも何でもないからな。むしろ謝られても迷惑だ。謝罪するなら俺が証拠を突きつけたあの時しかないだろうし……いや、その時に謝られても結果的に俺を裏切ってるから許せないか」
即答だった。こんな質問をしていて何だが、百子だって同じ気持ちになってしまう。だがこれで百子は何となくだが、陽翔が復讐を終えても苦しくなった理由が腑に落ちた気がするのだ。
「……やっぱりそうなのね。陽翔……陽翔はきっと元婚約者を責めてるんじゃなくて、証拠を突きつけた時に自分が言いたいことを言えてなかったから、その時の自分を責めてるんじゃない?」
「陽翔、話してくれてありがとう……本当に何て人なのかしら! 人との約束を破っておいて何も思わないの?! 信じらんない! そんな人と縁が切れて本当に良かったわ。今なら私も陽翔の気持ちが分かる。私、何ならその人の舌を引っこ抜いて喉を潰してやりたいし」
百子のいまだかつてないほどの低い声に、陽翔はぎょっとして彼女を見た。憤怒にきらめいているその瞳は彼の方を見ていない。
「百子、それはいくらなんでも……」
「あら、嘘ついた口は厳重に罰しないとだめじゃない」
憤怒でギラつく瞳がしっかりと陽翔を捉え、さらにとんでもないことを言ったため、陽翔は百子に覆いかぶさり、強引に彼女の唇を自分の唇で塞ぐ。
「言ってみただけじゃないの……実際やるかは別なのに」
唇が離れたので百子は顔を横に向け、罰の悪そうな顔でぶつぶつと告げたが、陽翔は大きくため息をこぼす。
「その割には目が本気だったぞ……」
陽翔はヒヤヒヤしながら百子の額にキスを落とした。まさか百子がここまで自分のことで感情を大きく動かすとは思ってもみなかったのだ。そのことが何だか無性に嬉しく、彼は頬にも唇を押し当てた。
「こんなこと言うのも何だけど、俺のために百子が怒ってるの、すげー嬉しかった。俺はまだあいつに恨みがあるが、そのおかげで百子と会えたのも事実だからな。感謝はできないにしても、悪いことじゃないのかもしれん」
百子は一瞬ポカンとしていたが、陽翔の首に両手を回し、そのまま彼に触れるだけの口づけをした。彼が一度体を起こし、百子を抱き上げて膝の上に乗せたので百子はさっと顔を赤くしていたが、彼の首に腕を回した。
「そうだ、陽翔……ちょっと聞きたいことがあって……」
歯切れの悪い百子に陽翔は首を傾げたが、迷わずに続きを話すように促すと、百子は言葉を選んでいるようでゆっくりと話し始めた。
「あのさ、例えばだけど……その人が陽翔に謝罪してきたら許す?」
「いや、許せねえな。許せる訳がない。今更謝られたって、俺のあの時の気持ちが消える訳でも何でもないからな。むしろ謝られても迷惑だ。謝罪するなら俺が証拠を突きつけたあの時しかないだろうし……いや、その時に謝られても結果的に俺を裏切ってるから許せないか」
即答だった。こんな質問をしていて何だが、百子だって同じ気持ちになってしまう。だがこれで百子は何となくだが、陽翔が復讐を終えても苦しくなった理由が腑に落ちた気がするのだ。
「……やっぱりそうなのね。陽翔……陽翔はきっと元婚約者を責めてるんじゃなくて、証拠を突きつけた時に自分が言いたいことを言えてなかったから、その時の自分を責めてるんじゃない?」