茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
☆R15
カーテンから漏れる朝日に抗えず、百子が薄っすらと目を開けると、ぼんやりとした肌色が視界に広がった。二、三度瞬きをすると、彼の胸板と喉仏が見え、さらに視線を動かすと、彼がまだ瞳を閉じていることに気づく。百子の肩には彼の逞しい両腕が回っており、動くと彼を起こしてしまうと感じた百子は、そっと彼の頬に触れて顎を引かせ、その唇に自身の唇を重ねた。柔らかくしっとりした感触に、うっとりと目を閉じて数秒が経過しても、彼の睫毛は微動だにしない。百子は彼が起きないことをいいことに、微笑んで彼の頬を撫でて、そこにも唇を軽く落とす。大抵はこれだけで目覚めるのだが、今日はその限りではないらしい。

お互い仕事が忙しく、昨日は久々に夕食を二人で食べることができて嬉しかったのだが、早く寝ようとした百子は、陽翔のギラつく瞳と抱きとめられた力に負けてしまい、あれよあれよという間にベットに投げられ、体の奥深くまで愛し合った。陽翔にしては珍しく、一度深く愛し合った後に、眠いと告げて百子の胸に顔を埋めて、間もなく寝息を立てていたのだ。百子も連日の残業の疲労に抗えず、彼が寝るのを見届けた後の記憶がない。

(寝てる陽翔……ちょっと可愛いかも)

陽翔の寝顔をじっくりと観察できる機会は早々無い。最近陽翔が多忙になり、百子よりも早く起きて家を出てしまうからだ。百子は百子で残業続きであり、今は別々に寝ている。こうして一緒に寝るのは久しぶりで、百子は再び彼の唇に口付けした。

(うーん……起きないな……今日はどこか行くって言ってたのに)

昨日の夕食の時に、久々にデートをする話になったのだが、陽翔は何故か行き先を教えてくれなかったのだ。今日になってのお楽しみということなのかもしれないが、どこに行くか分からないままだと、準備の時間がどれくらい必要なのかも分からないではないか。

(仕方ない……起こそう)

百子は試しにもぞもぞと動いてみたが、彼ががっちりと腕を肩に回しているため、大して動けなかった。彼女はさらに、彼の唇と歯列をこじ開けて、舌をするりと侵入させて口腔を丹念に舐めて舌を軽く吸ってみた。しかし依然として彼の瞳は閉じられたままである。どうしたものかとあれこれ悩んでいた百子の目に、彼の胸板にある小さな実が映る。僅かな悪戯心が鎌首をもたげた彼女は、彼の小さな実に手を触れて撫で回す。段々と充血していくそれに、口元がついつい歪んでしまった百子は、唇を寄せてアイスクリームを舐めとるように舌を這わせた。
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