茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
(茨城は今日は打ち上げがあるとか言ってたな。楽しい時間になればいいが。あんなことがあったんだから、目一杯楽しんで嫌なことを追い出せたらな……)
陽翔は電車に乗り込み、大学時代から知っている百子の連絡先に今から帰ると送信したが、その前に送った自分のメッセージが既読になっていないことに気づく。
(おかしい……8時には終わるとか言ってたのに、律儀なあいつが1時間もスマホを見ないでいるだと……?)
陽翔は不意にいてもたってもいられなくなり、家の最寄り駅について電車のドアが開くや否や、転がるように走って家まで急いだ。電気が消えているのを見ても、本人が帰ってない可能性も無きにしもあらずであり、陽翔はドアを乱暴に開け放つ。
「茨城、ただいま……おわっ!」
玄関の電気をつけると、百子が廊下でうつ伏せで倒れており、パンプスを履いた足が玄関に投げ出されているのを見て思わず声を上げた。彼女が帰っていないという、最悪の事態は回避できていたので、胸を撫で下ろしても良かったのだが、そんなところで寝ているのを見てしまえば心臓が止まりかねない。
(酔っ払って寝てたのか? いや、自分を失うほどあいつは酔ったりしないはずだが……?)
陽翔は名前を呼んだり揺すったりしてみたが、一向に起きる気配がない。彼はため息を一つついて、彼女のパンプスを脱がせ、仰向けにした。
「茨城、そんなところで寝てたらまた風邪ひくぞ」
彼女の髪をそっと顔から払いのけた陽翔は、百子の頬に涙の乾いた跡を見て取って、急速に嫌な予感が膨れ上がった。楽しい筈の打ち上げなのに、その後に泣くなんて不自然だからだ。
(俺に一言連絡も送れなかったのは、何かあったからか……元彼に接触されたとかじゃなければいいが)
自分の嫌な予感が当たらないように祈りながら、再び彼女の名前を呼ぶ。それでも百子が起きないので、陽翔は自分のカバンを廊下に置いてから彼女を抱き上げて寝室へ運んだ。百子はしばらくもぞもぞとしていたが、お気に入りの体勢を見つけてそのまま寝息を立てた。陽翔は彼女の顔に手を伸ばすが、首を振ってその手を下ろす。事情を聞くのは別に今日でなくとも良いからだ。
「おやすみ、茨城」
彼女の寝顔を見ていると、下半身に熱が集まるのを感じた陽翔は、慌ててシャワーを浴びに行く。冷水を浴びて何とか気持ちを鎮めた彼は、手早く体や髪を洗い、早々にリビングのソファーに寝転がった。
(早く元彼のことを忘れて俺の方を向いてほしい。あいつの弱みにつけ込む形になったが……この機会に俺に惚れてくれ)
久しぶりにざわめく心を抱えていて目が冴えていたが、疲労がそろそろと這い上がって来たのもあり、彼は次第にまどろみに飲み込まれていった。
陽翔は電車に乗り込み、大学時代から知っている百子の連絡先に今から帰ると送信したが、その前に送った自分のメッセージが既読になっていないことに気づく。
(おかしい……8時には終わるとか言ってたのに、律儀なあいつが1時間もスマホを見ないでいるだと……?)
陽翔は不意にいてもたってもいられなくなり、家の最寄り駅について電車のドアが開くや否や、転がるように走って家まで急いだ。電気が消えているのを見ても、本人が帰ってない可能性も無きにしもあらずであり、陽翔はドアを乱暴に開け放つ。
「茨城、ただいま……おわっ!」
玄関の電気をつけると、百子が廊下でうつ伏せで倒れており、パンプスを履いた足が玄関に投げ出されているのを見て思わず声を上げた。彼女が帰っていないという、最悪の事態は回避できていたので、胸を撫で下ろしても良かったのだが、そんなところで寝ているのを見てしまえば心臓が止まりかねない。
(酔っ払って寝てたのか? いや、自分を失うほどあいつは酔ったりしないはずだが……?)
陽翔は名前を呼んだり揺すったりしてみたが、一向に起きる気配がない。彼はため息を一つついて、彼女のパンプスを脱がせ、仰向けにした。
「茨城、そんなところで寝てたらまた風邪ひくぞ」
彼女の髪をそっと顔から払いのけた陽翔は、百子の頬に涙の乾いた跡を見て取って、急速に嫌な予感が膨れ上がった。楽しい筈の打ち上げなのに、その後に泣くなんて不自然だからだ。
(俺に一言連絡も送れなかったのは、何かあったからか……元彼に接触されたとかじゃなければいいが)
自分の嫌な予感が当たらないように祈りながら、再び彼女の名前を呼ぶ。それでも百子が起きないので、陽翔は自分のカバンを廊下に置いてから彼女を抱き上げて寝室へ運んだ。百子はしばらくもぞもぞとしていたが、お気に入りの体勢を見つけてそのまま寝息を立てた。陽翔は彼女の顔に手を伸ばすが、首を振ってその手を下ろす。事情を聞くのは別に今日でなくとも良いからだ。
「おやすみ、茨城」
彼女の寝顔を見ていると、下半身に熱が集まるのを感じた陽翔は、慌ててシャワーを浴びに行く。冷水を浴びて何とか気持ちを鎮めた彼は、手早く体や髪を洗い、早々にリビングのソファーに寝転がった。
(早く元彼のことを忘れて俺の方を向いてほしい。あいつの弱みにつけ込む形になったが……この機会に俺に惚れてくれ)
久しぶりにざわめく心を抱えていて目が冴えていたが、疲労がそろそろと這い上がって来たのもあり、彼は次第にまどろみに飲み込まれていった。