茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
★R18
百子は自身に覆い被さっている陽翔にしがみつき、体を震わせて啼く。陽翔に散々耳朶をわざとリップ音を立てて舐られ、触覚と聴覚を直にくすぐられたために、お腹の奥が疼いてしまうのだ。まだ唇と耳しか愛撫されていないのにも関わらず、百子は彼を性急に求めていることに気づき、それが明るみになるのを恐れて、嬌声を噛み締めた。それでも執拗に陽翔が首筋に舌を這わせるため、どうしてもあられもない声が漏れてしまう。声量を懸命に抑えていた百子だったが、唐突に陽翔の熱が離れてしまい、慌てて彼の腕をつかむ。

「百子、すまん」

陽翔は百子を抱き上げて座らせ、彼女に軽くキスを落とすと、テーブルに置いてある水差しをベッドサイドに移動させ、中身を口に含む。そして彼女を再び抱きしめた。

「んっ……」

冷たいものが口腔を満たし、百子はようやく喉が乾いているのだと気づき、冷涼さを求めて陽翔の舌を追尾する。水で温くなっていた彼の舌は、百子が追いすがったことで瞬時に元の熱さを取り戻し、互いの体温で染め上げていく。それが二、三度繰り返されると、陽翔の唇が離れていった。

「あり、がと……陽翔。お水美味しい……」

「……やっぱり喉乾いてたか。まだ飲むか?」

百子は首を横に振って、何故彼が喉の乾きに気づいたかを尋ねる。

「声が少し掠れてた。酒焼けかと思ったが、量的に考えると喉が乾いたんだろうなって」

「……気付いて、たの?」

百子は潤んだ瞳を見開く。声が掠れていた自覚がまるで無かったのに、陽翔はあの短い時間で百子の喉の乾きを看破していたのである。陽翔の気遣いに、百子は再び感謝の意を伝える。

「何となく百子が辛そうに見えたってのもあったしな。百子、今日は酒飲んでるんだから喉が乾いたらちゃんと言ってくれ」

「……でも、ムードを壊すのは、いや」

眉を下げて告げる百子に、陽翔のため息が降り落ちる。

「そこは気にするな。それに、喉が乾いてたら百子が辛くなるぞ」

百子は訳が分からずに首を傾げたので、陽翔は僅かに声に怒りを滲ませた。

「あのな……女は体の水分量が少なくなると濡れにくくなるんだぞ! それだとただ痛いだけになるじゃねえか! 俺は百子に痛い思いはさせたくない! 百子との幸せな時間を壊したくないんだ」

(……知らなかった)

百子は思わず下を向いてしまった。自分のことにも関わらず、無知な自分が恥ずかしかったのだ。それでも陽翔が気遣いをしたことの嬉しさの方が勝り、陽翔としっかり目を合わせて頷いた。陽翔にそっと抱き寄せられた百子は、彼の首筋に頬ずりすると、陽翔の懇願が百子の耳朶を打った。

「だから……だからちゃんと言ってくれ。今はたまたま俺が気づいただけだ。百子、自分を大事にしてくれ……」
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