茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
冬将軍が本格的に闊歩し、ベッドから出るのが億劫になってきたが、百子は懸命にリハビリを続けたおかげで、20日には退院が決まった。それまでの期間、百子は会社に連絡を取って、今の仕事の状況を把握し、少しずつ職場復帰できるように準備をしてある。休職の手続きをしてくれたのは他ならぬ陽翔であり、彼はそれ以外にも、百子の着替えや本を持って来るなど、入院中にあれこれ手を尽くしてくれたため、彼女は陽翔に頭が上がらない。百子は陽翔の好物を拵え、彼の欲しいものを贈ると約束し、彼の運転する車で二人の住む家に帰ることになった。道中は結婚式のことや、二人の将来のことについて話し合い、二人での話し合いの日時も決めたため、彼女の不安は蚊取り線香の灰を指で摘んだように、ほろほろと崩れていった。
「百子、まだ出るなよ」
エンジンが止まったため、シートベルトを外してドアに手にかけた百子は、陽翔を探るように見つめる。彼は素早く後ろの扉を開けて百子の荷物を取り出すと、彼女の乗ってる助手席のドアを恭しく開けたのだ。
「あ、ありがとう……陽翔」
気障ったらしくどういたしましてと返答する陽翔と目が合い、百子はどぎまぎして目を逸らす。
そのまま彼に腰を引き寄せられ、エレベーターに乗り、家の玄関のドアが閉まるや否や、百子は彼に顎を掴まれ、自身の唇を塞がれてしまった。玄関に鈍い音を立てて、彼の肩から荷物が滑り落ち、百子はそちらに注意を向けようとしたが、きつく抱きすくめられてしまったうえに、彼は執拗に百子の唇を、舌を求め続け、離してくれる気配はミジンコよりも小さかった。
「んっ……」
百子は陽翔の体温と、逞しい上半身と、彼の舌の熱さを一心に受ける。彼が与える全てに思考回路が、溶けたマシュマロのようにドロドロになり、無意識に彼の舌に自分の舌を絡め、唇を貪り、彼の背中に手が回った。
「ごめん、百子……まだ体が慣れてないよな……」
百子の膝が崩れそうになったのを、陽翔が慌てて支え、彼女を胸にもたれさせて抱きしめる。先程の強い抱擁と違い、身じろぎしたら抜け出せるのだが、百子は彼の胸に顔を埋めて首を横に振った。
「ううん……大丈夫……嬉しかったよ。陽翔とキスするの、好きだもん」
体中が歓喜に満たされた百子は陽翔を見上げたが、すぐに顔を伏せて、無言で陽翔の背中に回した手に力を込める。病院でも散々陽翔に抱きしめられたり、抱きついたりしていたが、家に二人きりでいる今の方が、安心感が桁違いなのだ。
(陽翔の匂い……落ち着く)
「……俺も好きだ」
言葉少なく、陽翔は再び彼女に唇を寄せた。そのまま舌を入れようかと思った陽翔は、彼女の体力のことが気に掛かり、軽く彼女の唇を啄むのみだ。下半身がはち切れんばかりに熱を蓄え、その先に進めと訴えているが、なけなしの理性をかき集め踏み躙る。
小さなリップ音と共に唇が離れると、百子の淋しげな瞳が陽翔を捉えた。
「ねえ、陽翔……いいよ? 陽翔をもっと近くで感じたいの……」
瞳が潤んだ百子は、陽翔に背伸びをして、やや掠れた声で囁く。
自身のなけなしの理性が粉々に砕ける音を、陽翔は微かに捉えた。
「百子、まだ出るなよ」
エンジンが止まったため、シートベルトを外してドアに手にかけた百子は、陽翔を探るように見つめる。彼は素早く後ろの扉を開けて百子の荷物を取り出すと、彼女の乗ってる助手席のドアを恭しく開けたのだ。
「あ、ありがとう……陽翔」
気障ったらしくどういたしましてと返答する陽翔と目が合い、百子はどぎまぎして目を逸らす。
そのまま彼に腰を引き寄せられ、エレベーターに乗り、家の玄関のドアが閉まるや否や、百子は彼に顎を掴まれ、自身の唇を塞がれてしまった。玄関に鈍い音を立てて、彼の肩から荷物が滑り落ち、百子はそちらに注意を向けようとしたが、きつく抱きすくめられてしまったうえに、彼は執拗に百子の唇を、舌を求め続け、離してくれる気配はミジンコよりも小さかった。
「んっ……」
百子は陽翔の体温と、逞しい上半身と、彼の舌の熱さを一心に受ける。彼が与える全てに思考回路が、溶けたマシュマロのようにドロドロになり、無意識に彼の舌に自分の舌を絡め、唇を貪り、彼の背中に手が回った。
「ごめん、百子……まだ体が慣れてないよな……」
百子の膝が崩れそうになったのを、陽翔が慌てて支え、彼女を胸にもたれさせて抱きしめる。先程の強い抱擁と違い、身じろぎしたら抜け出せるのだが、百子は彼の胸に顔を埋めて首を横に振った。
「ううん……大丈夫……嬉しかったよ。陽翔とキスするの、好きだもん」
体中が歓喜に満たされた百子は陽翔を見上げたが、すぐに顔を伏せて、無言で陽翔の背中に回した手に力を込める。病院でも散々陽翔に抱きしめられたり、抱きついたりしていたが、家に二人きりでいる今の方が、安心感が桁違いなのだ。
(陽翔の匂い……落ち着く)
「……俺も好きだ」
言葉少なく、陽翔は再び彼女に唇を寄せた。そのまま舌を入れようかと思った陽翔は、彼女の体力のことが気に掛かり、軽く彼女の唇を啄むのみだ。下半身がはち切れんばかりに熱を蓄え、その先に進めと訴えているが、なけなしの理性をかき集め踏み躙る。
小さなリップ音と共に唇が離れると、百子の淋しげな瞳が陽翔を捉えた。
「ねえ、陽翔……いいよ? 陽翔をもっと近くで感じたいの……」
瞳が潤んだ百子は、陽翔に背伸びをして、やや掠れた声で囁く。
自身のなけなしの理性が粉々に砕ける音を、陽翔は微かに捉えた。