茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
★R18 愛の形
「ちょ! 暁美! 待て! 風邪引くぞ!」
「やーだー! あそびたいー!」
陽翔はきゃいきゃいと声を立てながら、ふざけて走り回る暁美を、バスタオルを持ちながら追いかける。陽翔はお風呂上がりに彼女の髪を拭いていたのだが、どうやら暁美はじっとしていられなかったらしく、彼の手をすり抜けてしまったのだ。ろくに拭いていない自分の髪から雫が散っていくため、焦った陽翔はバスタオルを広げて暁美の頭上からすっぽりと被せた。
「捕まえた!」
いやいやと頭を振る暁美を、がっちりと捉えた陽翔は、素早く髪を拭いてドライヤーをかけ、パジャマを着せにかかる。だが今度はパジャマのボタンを最後まで留めさせてはくれず、教育番組で見たダンスを、見様見真似で踊りだしてしまった。暁美がリボンを回す真似をして、ビニール紐を振り回している暁美を観察しながら、陽翔は上手だねと拍手を送る。
それにも関わらず、暁美は手を止めてしまい、ビニール紐を放り出してしまう。陽翔はそれを見て怪訝な表情をしていたが、お風呂場から出てきた百子を認めて、暁美の行動の疑問が氷解した。
「陽翔、暁美のお風呂ありがとう。おかげでゆっくりできたよ」
「かあたん!」
陽翔に感謝の言葉を述べた百子は、駆け寄って来る暁美を抱き上げて、彼女の頬に顔を擦り寄せる。
「百子、髪乾かしてくる。暁美を頼んだ」
陽翔は頷いた百子と、再びビニール紐とダンスを始めた暁美を尻目に、自分の髪を拭きに脱衣場へと向かう。子供とお風呂に入ろうものなら、自分のことは全て後回しになってしまうことも珍しくない。とはいえ、何故かそれが苦になることは殆ど無かった。百子と事前に話し合って、当番制にしているからかもしれないが。
「暁美、もうねんねするよ」
「やだ! まだあそぶの!」
脱衣所のドア越しに、二人の声が細く聞こえるので、陽翔はパジャマを着る手間を惜しんで脱衣所を出る。暁美を宥めすかして寝かせようと意気込んでいた陽翔だったが、暁美が何の前触れもなく布団に倒れ込み、慌てて駆け寄った。
「あ、大丈夫。暁美は寝ちゃっただけ。電池切れみたいでびっくりしたけど」
ビニール紐を持ったまま、静かに寝息を立てている暁美を見て、陽翔はホッと息をついた。確かに2歳児は遊び疲れたり、食べている間に寝落ちしてしまうことは珍しく無いと聞いていたが、遊び疲れて唐突に寝てしまう所は初めて目撃して、動転しかけてしまったのだ。百子はゆっくりと暁美を布団に寝かせ、微笑みながら彼女の頭をなでている。
「やーだー! あそびたいー!」
陽翔はきゃいきゃいと声を立てながら、ふざけて走り回る暁美を、バスタオルを持ちながら追いかける。陽翔はお風呂上がりに彼女の髪を拭いていたのだが、どうやら暁美はじっとしていられなかったらしく、彼の手をすり抜けてしまったのだ。ろくに拭いていない自分の髪から雫が散っていくため、焦った陽翔はバスタオルを広げて暁美の頭上からすっぽりと被せた。
「捕まえた!」
いやいやと頭を振る暁美を、がっちりと捉えた陽翔は、素早く髪を拭いてドライヤーをかけ、パジャマを着せにかかる。だが今度はパジャマのボタンを最後まで留めさせてはくれず、教育番組で見たダンスを、見様見真似で踊りだしてしまった。暁美がリボンを回す真似をして、ビニール紐を振り回している暁美を観察しながら、陽翔は上手だねと拍手を送る。
それにも関わらず、暁美は手を止めてしまい、ビニール紐を放り出してしまう。陽翔はそれを見て怪訝な表情をしていたが、お風呂場から出てきた百子を認めて、暁美の行動の疑問が氷解した。
「陽翔、暁美のお風呂ありがとう。おかげでゆっくりできたよ」
「かあたん!」
陽翔に感謝の言葉を述べた百子は、駆け寄って来る暁美を抱き上げて、彼女の頬に顔を擦り寄せる。
「百子、髪乾かしてくる。暁美を頼んだ」
陽翔は頷いた百子と、再びビニール紐とダンスを始めた暁美を尻目に、自分の髪を拭きに脱衣場へと向かう。子供とお風呂に入ろうものなら、自分のことは全て後回しになってしまうことも珍しくない。とはいえ、何故かそれが苦になることは殆ど無かった。百子と事前に話し合って、当番制にしているからかもしれないが。
「暁美、もうねんねするよ」
「やだ! まだあそぶの!」
脱衣所のドア越しに、二人の声が細く聞こえるので、陽翔はパジャマを着る手間を惜しんで脱衣所を出る。暁美を宥めすかして寝かせようと意気込んでいた陽翔だったが、暁美が何の前触れもなく布団に倒れ込み、慌てて駆け寄った。
「あ、大丈夫。暁美は寝ちゃっただけ。電池切れみたいでびっくりしたけど」
ビニール紐を持ったまま、静かに寝息を立てている暁美を見て、陽翔はホッと息をついた。確かに2歳児は遊び疲れたり、食べている間に寝落ちしてしまうことは珍しく無いと聞いていたが、遊び疲れて唐突に寝てしまう所は初めて目撃して、動転しかけてしまったのだ。百子はゆっくりと暁美を布団に寝かせ、微笑みながら彼女の頭をなでている。