茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
唇が離れた僅かな間に、百子が陽翔は百子をうつ伏せにして枕を握らせる。百子が枕に顔を埋めたのを確認し、陽翔は彼自身を、蜜を湛えた襞の中にゆっくりと沈めた。

「……ッーー!」

どちらともなく、声にならない呻きや、互いの肉がぶつかる湿った音、結合部の水音が三重奏となって二人の耳を叩く。陽翔は百子に覆い被さり、荒い息と呻きを、散歩から帰ってきた犬のように吐き出し、百子は最奥をノックされた衝撃で体をそらした。

(声が出ちゃう……! それに、いつもより激しい!)

百子は枕カバーを強く噛んだのだが、陽翔が一際大きく呻くのを聞いてしまう。

「そんなに締めるな……! っく!」

「締めてな……あうっ!」

食いしばった歯の間から呻きが漏れ、思わず陽翔は百子の首筋にゆるく歯を立てる。彼女の体がびくんと震え、さらに襞が蠢いて熱杭に、離すまいと絡みついた。陽翔がさらに腰を推し進め、最奥を貫くので、何度めなのか不明な、白く甘い疼きが一気に弾け、百子は再び枕のカバーを強く噛む。

「百子ッ! 出るッ……! ああっ!!」

白い雷か弾け、全身が一瞬硬直したが、何度か腰を打ち付けて、欲に滾る白を残らず最奥へと送り込む。そのまま二人で横になり、陽翔は百子の背中に、振り返った彼女の唇に何度も口づけを落とし、しばし後ろから抱きしめていた。勢いと熱を失った分身がぬるりと蜜壺から這い出したため、陽翔は慌ててティッシュを掴み、彼女の股間にそれを当てる。そして百子をゆっくりと起こし、執念深く蜜壺に留まっている自身のどろりとした欲を清めた。

「陽翔、気持ちよかった……」

掠れの無い声が、うっとりと陽翔の鼓膜を撫で、唇に柔らかく湿った物が触れ、舌がするりと口腔に侵入する。優しく頬や上顎をなぞり、陽翔はそれに答えた。

「俺もだ……激しくしたつもりは無かったが、あんまり手加減できなくてごめん」

百子はころころと笑って首を横に振り、陽翔の唇を啄むようにキスをした。

「ううん。陽翔と繋がれて幸せだもん。大好きよ」

陽翔は返事の代わりに、百子の唇を舌を奪い尽くし、彼女の唾液を飲み込んだ。

「百子、俺も百子を愛してる。ずっと離さないから、覚悟しろよ?」

このままずっと抱き合っていたかったが、陽翔は百子を再び横抱きにして、忍び足で夫婦の寝室に戻り、百子を寝かせてパジャマを寄越す。いそいそと着替えた二人は、幾度となくキスを交わした。

「今度産まれるのは男の子かもしれんな」

百子の腹を愛おしげに撫でながら、陽翔はきりっとして囁く。妙に説得力を感じた百子は、目をぱちくりさせた。

「まだできてもないのに。陽翔は男の子がほしいの? 私は陽翔の子供ならどっちでも良いかな」

微笑む百子に、陽翔はニヤリと笑ってみせた。

「俺は男の子を作るつもりで百子を抱いたぞ……知ってるか? 夫婦の営みは激しい方が男の子が産まれやすいらしいぞ?」

百子はわなわなと唇を震わせる。どうやら百子が激しいと感じたのは気のせいでも何でもなく、陽翔が意図していた範疇だったらしい。

「……え? まさか、暁美ができる前は優しくしてたってこと……? それにしては激しかったと思うんだけど。そもそも赤ちゃんの性別って、そんな簡単に決まらないと思うよ?」

「試してみないと分かんないだろ。だから明日からは激しく抱くぞ。百子は優しいだけじゃ物足りなさそうだしな?」

低く艶のある声がぞわりと鼓膜を撫で、瞬時に顔を赤くした百子は、陽翔の胸板を拳でドンドンと叩く。その手を彼に掴まれ、キスを落とされた百子は、彼の流れるようなその行動に歯噛みしていたが、暁美がトイレに行きたいと起きてしまったことで霧散した。陽翔がおまるを用意し、二人を見守っていた百子だが、陽翔に愛された体は気だるさを訴え、徐々に瞼が下がってしまい、戻ってきた陽翔に頭を撫でられながら、いつしか微睡みに飲み込まれてしまった。



そして間もなく百子に愛の結晶が宿り、次の年に百子そっくりな男の子が無事に誕生した。男の子は正日(まさあき)と名付けられ、何かと暴走しがちな暁美のブレーキ役に奔走する羽目になるのだが、それはまた、別の話。






『茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜』(終)
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