茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
陽翔の選んだイタリアンのお店は、外観も内装もモダンでスタイリッシュな印象を受けた。レトロな方が百子の好みではあるが、モダンな内装も悪くないのかもしれない。知る人ぞ知る美味しいお店だと彼から聞いていた。サラダはシャキシャキとしているし、スパゲッティは生地を熟成させているので食感が少しモチモチとしているし、店主が石窯で焼いたこだわりのパンは外はパリッと、中はしっとりとして美味しい。陽翔はボロネーゼを、百子はカルボナーラを食べているが、手慣れた様子で食べている百子は、陽翔がフォークの扱いに四苦八苦している様子を見て、彼に合わせて食べるスピードを落とした。
「美味しいね。こんなお店があったなんて知らなかったわ。ありがとう。麺の種類もたくさんあって面白いわね。次はフェットチーネを食べてみたいかも」
「……そうだな」
フォークに巻きつけたスパゲッティがフォークから脱落し、彼女の問いにやや落胆しながら答える。陽翔はスパゲッティをあまり食べに行くことが無いので、上手く食べるのはすこぶる苦手なのだ。メニューを見ても横文字だらけでよく分からず、百子にあれこれ聞きながら選べたから良かったものの、こんなに食べるのに苦戦するとは思わなかった。スパゲッティを巻けたと思っても、油のせいだか何だか知らないがすぐにフォークが裸になるのだ。何なら具材もお皿の端っこに追いやられていたりする。味は美味しいのに中々食べられないのが、無駄に陽翔の焦燥感を煽る。
「茨城はきれいに食べるな。パスタは好きなのか?」
百子がどうやって食べているかも気になったのもあり、陽翔は嬉しそうにパスタを食べている彼女に聞いてみることにした。
「うん。家で茹でてパウチのソース掛けるのが関の山だけど。私、フォークの扱いそんなに上手くないから家で練習していた時もあったのよ。最初はスプーンの上でフォークをくるくる回してたわね。そのうちスプーン無しでもできるようになったけど」
当時の不器用さを思い出し、百子はくすくすと笑った。それこそ向かいにいる陽翔のように、巻いても巻いてもフォークからスパゲッティが逃げていたからである。百子は陽翔がじっと自分の手元を観察しているのを見て、いつも食べている時よりも速度を落とした。
「東雲くん。フォークだけじゃなくてスプーン使うと楽よ。ここのお店にはスプーンもあるから、使っても大丈夫だし」
「……そうなのか? でも海外の映画とかを見てるとスプーン使ってる奴はいないぞ?」
「確かにイタリアはフォークだけで食べるのがスマートって言われてるわね。でもここは日本なんだしそこまで気にしなくてもいいと思うわよ。流石に音を立ててすするとか、スパゲッティを途中で噛み切るのは駄目だけどね」
「美味しいね。こんなお店があったなんて知らなかったわ。ありがとう。麺の種類もたくさんあって面白いわね。次はフェットチーネを食べてみたいかも」
「……そうだな」
フォークに巻きつけたスパゲッティがフォークから脱落し、彼女の問いにやや落胆しながら答える。陽翔はスパゲッティをあまり食べに行くことが無いので、上手く食べるのはすこぶる苦手なのだ。メニューを見ても横文字だらけでよく分からず、百子にあれこれ聞きながら選べたから良かったものの、こんなに食べるのに苦戦するとは思わなかった。スパゲッティを巻けたと思っても、油のせいだか何だか知らないがすぐにフォークが裸になるのだ。何なら具材もお皿の端っこに追いやられていたりする。味は美味しいのに中々食べられないのが、無駄に陽翔の焦燥感を煽る。
「茨城はきれいに食べるな。パスタは好きなのか?」
百子がどうやって食べているかも気になったのもあり、陽翔は嬉しそうにパスタを食べている彼女に聞いてみることにした。
「うん。家で茹でてパウチのソース掛けるのが関の山だけど。私、フォークの扱いそんなに上手くないから家で練習していた時もあったのよ。最初はスプーンの上でフォークをくるくる回してたわね。そのうちスプーン無しでもできるようになったけど」
当時の不器用さを思い出し、百子はくすくすと笑った。それこそ向かいにいる陽翔のように、巻いても巻いてもフォークからスパゲッティが逃げていたからである。百子は陽翔がじっと自分の手元を観察しているのを見て、いつも食べている時よりも速度を落とした。
「東雲くん。フォークだけじゃなくてスプーン使うと楽よ。ここのお店にはスプーンもあるから、使っても大丈夫だし」
「……そうなのか? でも海外の映画とかを見てるとスプーン使ってる奴はいないぞ?」
「確かにイタリアはフォークだけで食べるのがスマートって言われてるわね。でもここは日本なんだしそこまで気にしなくてもいいと思うわよ。流石に音を立ててすするとか、スパゲッティを途中で噛み切るのは駄目だけどね」