茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
陽翔はしばし逡巡していたものの、せっかくの美味しいスパゲッティが冷めるのもいやなので、迷った末にスプーンを取ってスパゲッティをフォークに巻くことにした。驚くほど食べやすくなったので、スプーンに頼るのもやぶさかではないのかもしれない。
「垂直にフォークを刺すよりは、斜めから刺した方があまりスパゲッティがついてこないよ。お皿の真ん中よりも、端っこで巻くと上手く食べられるかな」
彼女に言われたとおりに陽翔がやってみると、さっきよりも格段に巻きやすくなったと感じた。こうなると彼の手は止まらない。あっという間に陽翔は百子よりも早くスパゲッティを平らげてしまった。
「すまん、また早食いしちまった……ゆっくり食べていいぞ。俺はパン食べてるし」
「ここのスパゲッティ美味しいもんね。早食いなのも納得かも。東雲くんはもう少し食べる時に噛んだ方がいいと思うけど」
パンをちぎってオリーブオイルにつけて食べている陽翔は、頭の中で噛む回数を30回ほど数えることにした。そういえば早食いの習慣が身について久しいと感じる。ゆっくり誰かとこうして食事する機会もそれほど無かったこともあるが、社会人になる前と今とでは食べる速度がまるで違った。そんなことを考えていたらいつの間にか百子も食事を終わらせていた。そして思ったよりも早くに目の前にティラミスが滑り込んできた。ケーキのように四角いものではなく、カクテルのグラスのようなものに入って提供されているのが物珍しい。グラスから溢れんばかりのマスカルポーネのクリームとココアパウダーが食欲をそそり、口に入れるとそれらの芳醇な香りが口いっぱいに広がった。
「んー! 美味しー! こんな濃厚なティラミスって初めて!」
目元を細め、ティラミスに舌鼓を打ってる百子を見ていると、こちらもなんだか幸せな気分になる。陽翔もティラミスを恐る恐る食べてみたが、こんなにまろやかで濃厚な物は初めて食べたので、思わず感嘆の息を漏らした。
「これは……次も食ってみたいな」
二人はその後無言でティラミスをぺろりと平らげ、休憩もそこそこに店をあとにする。百子がせっかく話す気になっているので、そのための時間を多く取りたいのだ。
「ごちそうさまでした。東雲くんありがとう」
「気に入ったみたいで良かった。今度は俺がお前にティラミスをあげような」
「え? いいの? ありがとう! 東雲くんお菓子も作れるのね!」
「いや……俺が作るわけじゃないが……まあ楽しみにしとけ」
百子は彼の言葉がよく分からないのと、顔を赤くして挙動不審になっているのを見て首を傾げたが、彼に手を引かれて帰途についた。
「垂直にフォークを刺すよりは、斜めから刺した方があまりスパゲッティがついてこないよ。お皿の真ん中よりも、端っこで巻くと上手く食べられるかな」
彼女に言われたとおりに陽翔がやってみると、さっきよりも格段に巻きやすくなったと感じた。こうなると彼の手は止まらない。あっという間に陽翔は百子よりも早くスパゲッティを平らげてしまった。
「すまん、また早食いしちまった……ゆっくり食べていいぞ。俺はパン食べてるし」
「ここのスパゲッティ美味しいもんね。早食いなのも納得かも。東雲くんはもう少し食べる時に噛んだ方がいいと思うけど」
パンをちぎってオリーブオイルにつけて食べている陽翔は、頭の中で噛む回数を30回ほど数えることにした。そういえば早食いの習慣が身について久しいと感じる。ゆっくり誰かとこうして食事する機会もそれほど無かったこともあるが、社会人になる前と今とでは食べる速度がまるで違った。そんなことを考えていたらいつの間にか百子も食事を終わらせていた。そして思ったよりも早くに目の前にティラミスが滑り込んできた。ケーキのように四角いものではなく、カクテルのグラスのようなものに入って提供されているのが物珍しい。グラスから溢れんばかりのマスカルポーネのクリームとココアパウダーが食欲をそそり、口に入れるとそれらの芳醇な香りが口いっぱいに広がった。
「んー! 美味しー! こんな濃厚なティラミスって初めて!」
目元を細め、ティラミスに舌鼓を打ってる百子を見ていると、こちらもなんだか幸せな気分になる。陽翔もティラミスを恐る恐る食べてみたが、こんなにまろやかで濃厚な物は初めて食べたので、思わず感嘆の息を漏らした。
「これは……次も食ってみたいな」
二人はその後無言でティラミスをぺろりと平らげ、休憩もそこそこに店をあとにする。百子がせっかく話す気になっているので、そのための時間を多く取りたいのだ。
「ごちそうさまでした。東雲くんありがとう」
「気に入ったみたいで良かった。今度は俺がお前にティラミスをあげような」
「え? いいの? ありがとう! 東雲くんお菓子も作れるのね!」
「いや……俺が作るわけじゃないが……まあ楽しみにしとけ」
百子は彼の言葉がよく分からないのと、顔を赤くして挙動不審になっているのを見て首を傾げたが、彼に手を引かれて帰途についた。