茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
「何言ってんだよ。浮気する側が100パーセント悪いに決まってんだろうが。裏切り行為というか背信行為だ。仮に何かお前に問題があったとしても、それはちゃんと話し合って解決すべきだ。話し合いに持っていけないのなら、ずっと関係を続けるのは無理だと思うから別れた方がいいと俺は思うぞ。お前は辛いだろうが、その程度の奴だって露呈したいい機会とも捉えられる。もし結婚とかして子供もできたら、それこそ地獄だろうからな」

百子は戸惑いながらも緩く頷く。きつめな言葉に感じられたが、彼の言うことはもっともである。

「そうね……話し合いはちゃんとしないと……持ちかけたことはあったんだけど、応じてくれない時点で諦めるべきだったわ……」

陽翔は眉を少しだけ上げた。

「話し合いはしたのか……良かったらその時のことを聞かせてくれるか? 辛いなら言わなくていいが」

百子は首を振って続けた。彼に吐き出したためか、多少涙声はするものの、つっかえることはなかった。

「うん……あのね、元彼と半年前にいきなりセックスレスになって……何でって聞いたけど、お前とはできないとしか言われなくて。私に問題があると思って、そのことを話し合おうと持ちかけたんだけどはぐらかされて……まあ私もその時は残業増えたり仕事が忙しくなってあんまり時間を取れなかったのもあって放置してたんだけど……流石にデートの約束まですっぽかされて喧嘩したわ。その時も弘樹はお前が掃除や料理をサボったりしたからだとか、色々なじられたわね……思えば半年前から弘樹は私にチクチク言うようになってたかも。きっと浮気はそこから始まってたんだわ……」

「それってモラハラじゃねえか。確かに浮気したらパートナーにモラハラする輩もいると聞いたが、まさか本当にいるとは思わなかった。まあお前の元彼の本性はそっちだったってことだな。尚更別れて正解だ」

彼に未練などない百子は迷うことなく頷いたが、再び涙が目の縁を追い越して溢れてしまう。陽翔はテーブルにあるティッシュで百子の涙を拭いた。

「……そうね、そこは良かったかも。あれが本性だと思うと何か騙された感じがして悔しいけど、ボロがでたことは喜ぶ所……かな。あんなことされたせいで荷物も取りに行きにくいのが嫌だけど……」

百子は色々な意味でがっかりとして下を向いたが、次の陽翔の言葉に目を剥くことになる。

「なあ、もし茨城さえ良ければだが……俺と一緒に住まないか?」
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